■書名:介護現場で今日からはじめる口腔ケア −楽しくできる健口(けんこう)体操と正しいケアで誤嚥・肺炎予防<もっと介護力!シリーズ>
■著者:山田 あつみ
■監修:飯田 良平
■発行元:メディカ出版
■発行年月:2014年10月5日
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読めばすぐ始められる、介護職のための口腔ケア実践本
高齢者にとって食事は、「楽しむ」ものだけでなく、「健康を保つ」ために必要不可欠なもの。
うまく噛めなくなったり、飲み込む力が弱くなると満足に食事ができなくなり、心と身体が衰えてしまう…。
利用者がいつまでも自分の口や歯で食事を楽しむために、介護職が口腔ケアを行うことは大切。しかし、「やり方が分からない」「利用者が口を開いてくれない・口腔ケアを嫌がる」「口腔ケアは歯科医師や歯科衛生士がやるものだと思っている」など、さまざま理由から、口腔ケアに取り組めない人もいるのではないだろうか。
そんな人にぜひ手にとって欲しいのが、この「介護職のための口腔ケア」を紹介した本書だ。
本書の前半では、「介護職が今日からできる健口(けんこう)体操」を紹介している。「健口体操」とは、多くの介護予防教室や高齢者施設、デイサービスなどで取り入れられている、口のまわりを鍛える体操のこと。
健口体操を行うことのメリットについて、筆者の山田あつみさんはこう書いている。
<舌や口の周りの筋肉をほぐして血流を良くしたり、唾液腺マッサージで唾液をよく出してから食事をはじめると、よく噛むことができ、安全に飲み込むことにつながります。>
口を開けたり閉じたり、歌をうたったり、ほほや首筋をマッサージしたりと、健口体操の方法はとても簡単。本書を読みながら自分でもやってみると、その効果を実感することができる。
しかも、「自立している人・軽度の人向け」や「食事介助が必要な人向け」など、利用者の要介護度にあわせて健口体操を紹介。利用者ひとり一人の身体の状態に配慮して実践できるのもうれしい。
また、口腔ケアを取り入れたアクティビティも紹介。空き箱や色紙、ストローなど、簡単に手に入る道具を使って、利用者が楽しみながら口腔ケアができるゲームは、デイサービスや施設で行われるレクリエーションのバリエーションを広げることにも役立つ。
さらに本書の後半では、介護職として知っておきたい口腔ケアの情報が紹介されている。
口腔ケアには、歯の病気を防いだり、食事がスムーズになるというメリットがあるが、それだけではない。肺炎や糖尿病、心臓病、認知症といった病気の予防・改善にも役立つ。また、口の動きがよくなると、言葉もはっきりするし、表情も豊かになる。
山田さんは本書のあとがきで、口腔ケアの指導を行った事業所に、3年後に再び訪れた時のことを、こう語っている。
<再びその事業所を訪れた私の目に飛び込んできたのは、総入れ歯であるにも関わらず、おいしそうに食事を楽しみ、表情豊かで生き生きとした利用者さんたちの笑顔でした。私には、その笑顔こそが、口腔機能向上プログラムに取り組んだ成果の証明だと思えたものでした。>
介護職が、適切な口腔ケアを取り入れれば、利用者の生活を変えることができる。そして、口腔ケアは利用者の命を守ることにつながる。
お口の健康の大切さを実感しながら、利用者に口腔ケアを実践できる、ぜひ手元に置いておきたい一冊だ。
著者プロフィール
<著者>
山田 あつみ(やまだ・あつみ)さん
日本摂食嚥下リハビリテーション学会認定士。歯科衛生士。日本女子衛生短期大学(現:神奈川歯科大学短期大学部)卒業。国際医療福祉大学大学院医療福祉経営専攻修士課程在学中。1987年より歯科衛生士として川崎市歯科医師会にて障害者歯科診療、高齢者歯科診療、介護予防事業に従事。2010年より日本医歯薬専門学校講師、2012年ユーキャン スキルアップセミナー講師を務めるほか、オーラルケアマネジメント普及のため全国各地にて口腔ケアセミナーを開催。
<監修者>
飯田 良平(いいだ・りょうへい)さん
鶴見大学歯学部高齢者歯科学講座 助教。鶴見大学歯学部附属病院 摂食・嚥下リハビリテーション外来。東京都立神経病院非常勤医員。鶴見大学歯学部歯学科卒業後、鶴見大学歯学部附属病院臨床研修歯科医、診療科助手(高齢者歯科学講座)を経て現在に至る。日本老年歯科医学会 指導医・専門医、同摂食嚥下リハビリテーション委員会、在宅歯科診療等検討委員会、日本摂食嚥下リハビリテーション学会 評議員・認定士。