介護の仕事は、利用者の生活に寄り添う仕事。人として成長することもでき、他の仕事に代えがたい魅力があります。しかし一方で、肉体的・精神的なストレスは少なくありません。介護特有の仕事のストレス、人間関係のストレス、給与や体力への不安…
介護福祉士・心理カウンセラーの篠雅行さんがアナタのお悩みにアドバイスします。
今週のお悩み事例
かおりさん(障害者施設 1年目 介護職 22歳)
今年大学を卒業し、障害者施設へ就職しました。しかし入って早々、ある女性利用者から暴力をふるわれました。しかも1度ではなく、何度も。どうも敵対視されてしまったみたいです。痛いし、怖いし、時にはアザになることもあります。
スタッフの利用者に対する暴力は、ときに新聞に載ることがありますが、なぜ自分たちへの暴力は許されるのでしょうか。やるせない気持ちになるし、怖くて眠れないときもあります。仕事に行くのがとても憂鬱です。
篠さんからのアドバイス
かおりさん、日々のお仕事本当にお疲れ様です。
現場の職員は、本当に毎日必死ですよね。本当に怖いと思いますし、大変な思いをされていると思います。確かに職員の暴力が新聞に載ることがありますが、実際の現場は利用者から職員への暴力がほとんどですよね。
「仕事だからしょうがない」という言葉で片付けてしまいがちですが、職員だって人間です。「いつ他害行為をされるかわからない恐怖心」は、現場に入った人でないとわからない気持ちかもしれませんね。
私の場合、高齢者施設では、利用者に罵声を浴びせられたり、噛み付かれたりはしましたが、激しい他害行為で悩むことはありませんでした。でも、その後、成人の障害者施設に移ってから、他害行為で本当に悩みましたね。力もあるし、身体が成人の私より大きい人もいます。特に女性職員は、男性利用者を相手にするのは大変だと思います。私もかおりさん同様、入った当初は殴られたり、噛み付かれたり、髪の毛を引っ張られたり。その時はとても怖かったし、夢にまで出てきてしまい、仕事に行くのが嫌でしたね。毎日悩んでいました。
利用者による他害行為が起こった時、その都度、職員同士で話をして、解決したケースもありますし、結局職員が辞めてしまったケースもあります。やはり早急に解決策をうつべきだと思います。かおりさんの同僚や上司に相談し、もし取り扱ってくれないのなら、さらにその上の上司に相談することができませんか?運営側は、職員に長く居てほしいと思っています。きっと、かおりさんの相談を聞いてくれると思います。
そこで、大事になってくるのが「記録」です。
いつ、どこで、どんなことが起きたか、どういう対応をしたかなど、客観的事実に基づいた「記録」が大事になってきます。また他害行為があった場合、ケガなど身体的な傷は目に見えますが、「寝られない」「怖い」などの精神的なダメージは他人の目には見えにくいものです。簡単なメモ程度でも結構ですので、精神的な症状も一緒に記録することをお勧めします。運営側に伝える時に、役立つと思います。
ひとりで悩みを抱え込まず、同僚、上司、そのまた上の上司にまで、相談してみてくださいね。
プロフィール
篠雅行(しの・まさゆき)
老人ホームや在宅介護事業所、障害者授産施設で介護職を務めるなかで、介護業界で働く人を精神的にサポートしたいと思い、カウンセラーの勉強を始める。介護福祉士、認定心理士、一般社団法人心理技能振興会 心理カウンセラーの資格を持つ。
公開日:2014/11/6
最終更新日:2019/8/21