介護の仕事は、利用者の生活に寄り添う仕事。人として成長することもでき、他の仕事に代えがたい魅力があります。しかし一方で、肉体的・精神的なストレスは少なくありません。介護特有の仕事のストレス、人間関係のストレス、給与や体力への不安…
介護福祉士・心理カウンセラーの篠雅行さんがアナタのお悩みにアドバイスします。
今週のお悩み事例
しげおさん(デイサービス 10年目 介護職 40歳)
デイサービスで働いて10年目。これまでの経験を買われて、施設長に昇進しました。職場のさまざまな数値目標が設定されています。現場たたきあげできており、利用者さんのことを一番に考えたいのですが、営業所のように数字やコストカットを要求されることに違和感を持ちつつ運営しています。
現場の職員は協力的で、私の意見に従ってくれています。もちろん潜在的な不安はあるとは思いますが、今のところ黙々とこなしてくれています。職員のためにも利用者第一の運営をと思うのですが、いつも頭にちらつくのが「ご利用者さんが少なくなったらどうしよう」「経費がどれだけかかるか」など「お金」のことです。
そんな自分に悲しくなるときがあります。
篠さんからのアドバイス
しげおさん、日々のお仕事、本当にお疲れ様です。
私は「利用者のために」とこの業界に入り、障害者施設3年目で主任になりました。運営側に回れば、他部署との関わりやお金の面で、本社と現場の意見の板挟みになり、大変ですよね。しかも、しげおさんは施設長。計り知れないプレッシャーの中でお仕事をされていると思います。本当にご苦労様です。
「現場の職員が協力的」ということですが、これは、しげおさんが職員に慕われている証しでしょう。きっと職員の話や悩みを聞いたりして、コミュニケーションの工夫をされていると思います。
さて「利用者を第一に考える運営」ということはどういうことでしょうか?
私は、職員が仕事をしやすい環境が、利用者第一の運営につながると思っています。
現場を回すのは職員です。職員が働きやすい環境が一番です。どんなに介護の志が高くとも、介護技術のレベルが高くとも、働きにくい環境では職員の余裕はなくなり、心もすさんできます。それは結果として、介護の質の低下につながります。
働きやすくするためには色々な方面からのアプローチがあると思いますが、そのひとつに「職員の話しや悩みに耳を傾ける」ということがあるのではないでしょうか。
現場の職員は本当に悩みがいっぱいです。その悩みを聞く姿勢だけでも、職員が仕事をしやすい環境になり、ひいては利用者第一の運営ということになるのではないでしょうか。
もちろん全ての職員の要望を実現することは無理です。経費の問題もあるでしょう。数字が見えているのは、しげおさんですから、最終判断はリーダーであるしげおさんの意見で良いと思います。
「すばらしいAという意見もあったが、経費の問題で今回はBで行かせて頂きます」と説明し、最終決断すればいいのです。
大切なことは「職員の話を親身に聞くこと」。しげおさんは、既に取り組まれているかもしれませんが、話を聞く際に「説明する」「説得する」だけではなく、「日々の仕事で頑張ってくれている感謝やねぎらい」も伝えてみてはいかがでしょうか。
現場の職員は、毎日必死になって働いていますからね。しげおさんのその言葉に、本当に救われると思います。
プロフィール
篠雅行(しの・まさゆき)
老人ホームや在宅介護事業所、障害者授産施設で介護職を務めるなかで、介護業界で働く人を精神的にサポートしたいと思い、カウンセラーの勉強を始める。介護福祉士、認定心理士、一般社団法人心理技能振興会 心理カウンセラーの資格を持つ。
公開日:2014/10/9
最終更新日:2019/7/24