転職の際、勤務地や給与、待遇などの条件によって転職希望先を絞り込む人も多いことでしょう。
それに加えてチェックしたいのが、「施設を運営する法人」について。運営母体によって経営方針や施設の特徴、待遇などが異なってくるんです。
ここでは、介護施設を経営する法人の種類や、法人によってどのような差があるのか解説します。
介護施設・事業所を経営する法人にはどんな種類がある?
転職サイトや介護施設・事業所のサイトで「会社概要」や「法人概要」をチェックすると、社会福祉法人や医療法人、株式会社、NPO法人、一般社団法人、公共団体などさまざまな法人名を確認できます。
介護施設・事業所の運営母体で特によく目にするのが、
「社会福祉法人」「医療法人」「株式会社」です。
「社会福祉法人」「医療法人」は、利益を目的とせず、命や健康、安全を守ることを事業目的とした非営利団体のこと。
一方
「株式会社」は、事業によって得られた利益を、株主など組織の構成員に分配する営利を目的とした組織です。
事業目的もそれぞれ異なり、社会福祉法人は福祉を、医療法人は医療を目的とした事業を行いますが、株式会社は経営者が自由に定めることができます。
「社会福祉法人」「医療法人」「株式会社」の特徴
「社会福祉法人」「医療法人」「株式会社」の3つの法人は、運営する施設の違いや特徴はどのように違うのでしょうか?それぞれの法人の違いを理解し、自分が希望する働き方や介護スタイルと合う法人はどれか考えていきましょう。
◆「社会福祉法人」の特徴と運営している施設の例
社会福祉法に基づき、
社会福祉事業を行うことを目的として設立された民間企業が
「社会福祉法人」。
営利目的ではなく、
福祉の充実や発展で地域や住民に貢献する公益を目的とした組織です。
社会福祉法人が運営する高齢者福祉施設は、
「特別養護老人ホーム」(第一種社会福祉事業)、「訪問介護」「デイサービス」「ショートステイ」(第二種社会福祉事業)など。そのほか、「児童養護施設」「障害者支援施設」「救護施設」「保育所」といった介護・保育・更生施設を運営する社会福祉法人もあります。
医療法人や株式会社と大きく違うのは、社会福祉法人は
特別養護老人ホームを運営できる法人であるということ。個別法により、介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)の経営主体は、社会福祉法人などに限定されています。
《社会福祉法人が運営する施設の求人情報》
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◆「医療法人」の特徴と運営している施設の例
「医療法人」は、病院、医師もしくは歯科医師が常時勤務する
診療所または介護老人保健施設を開設することを目的として、医療法の規定に基づき設立された法人のこと。
基本的に運営するのは、病院や診療所といった
医療施設、
介護老人保健施設ですが、
「介護付き有料老人ホーム」「サービス付き高齢者向け住宅」「デイケア」「デイサービス」「訪問看護ステーション」「訪問介護」などを手掛ける法人も増えています。
施設の多くは、クリニックを併設していたり、近隣にグループ病院がある場所に施設をかまえているところが増えています。「入院時は優先的にベッドを確保」など、
病院と連携していることによる医療面の安心を打ち出しているところも多いようです。
《医療法人が運営する施設の求人情報》
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◆「株式会社」の特徴と運営している施設の例
「株式会社」は、
営利を目的に事業を展開する法人。
専門の知識が必要な介護事業ですが、ヘルスケア分野のみならず、飲食業、建設業、流通業、不動産業、保険業など、異業種の法人も続々と介護福祉事業に参入しています。
株式会社が運営している施設は、
「介護付き有料老人ホーム」「デイサービス」「サービス付き高齢者住宅」「グループホーム」「訪問介護」「デイケア」など。
異業種ならではの視点を活かした、
多様で特色のある介護サービスを提供している法人が多くなっています。全国各地に事業所を広げ、複数の形態の施設を手がける株式会社も多数存在します。
《株式会社が運営する施設の求人情報》
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法人格別の平均月収
「社会福祉法人」「医療法人」「株式会社」によって、事業の目的や運営できる施設など特徴があることを紹介しましたが、働く人にとって気になるのは、法人によって給与の差はあるのかということでしょう。
厚生労働省の統計結果から、「社会福祉法人」「医療法人」「株式会社」の運営母体ごとの平均給与を見てみます。
【運営母体別の介護職員の平均給与】
・社会福祉法人 / 338,610 円
・医療法人 / 325,750 円
・営利法人 / 303,530 円
介護職員の平均給料は、社会福祉法人がやや高く、医療法人と約1万3,000円の差があります。
営利法人は、それより低く30万円強。
ただし、営利法人はその規模の大きさによって給料が大きく左右されるため、中には社会福祉法人や医療法人よりも高い給与額を提示しているところもあります。
参考:
厚生労働省「令和2年度介護従事者処遇状況等調査結果」
社会福祉法人のメリット・向いている人
◆社会福祉法人はこんな人におすすめ
・収入・安定性を重視したい
・公的な施設で働きたい
・特別養護老人ホームで働きたい
・身体介護のスキルを身に付けたい
社会福祉法人は、他の法人格と比べて
平均給与が高めです。また、民間企業と比べて倒産リスクも少ないので、
収入面や安定性を重視する人におすすめです。
特別養護老人ホームのほか、デイサービス、訪問介護など複数の施設を経営しているところも多いため、希望をすれば同じ法人内で異動し、
さまざまな施設形態でスキルを磨くこともできるでしょう。
社会福祉法人は、「特別養護老人ホーム(特養)」を運営できるという特徴があります。そのため、
公的な介護施設で働きたい人にも向いています。
特別養護老人ホーム(特養)の入居者は要介護3以上、終身にわたって入居できるのが原則であり、介護度の高い利用者が多いことが特徴。
重度の身体介護にも対応できる技術、認知症ケアに関する知識を習得したい人にも適しているでしょう。また、特養の7割が看取り介護を行っているという現在、
一人の利用者と長期間にわたって関わりたい人や、
看取りケアに携わりたい人にも向いています。
医療法人のメリット・向いている人
◆医療法人はこんな人におすすめ
・医療の知識を身に付けたい
・リハビリの知識や技術を身に付けたい
・多職種と連携して働きたい
・安定した環境で働きたい
クリニック併設の介護施設や、リハビリや治療を目的とする介護老人保健施設やデイケアなどを運営することが多い医療法人。病院と連携した介護施設が多いので、
医師や看護師と連携しながら働くことができます。
理学療法士や作業療法士といったリハビリ職とも接する機会も増えるため、必然的に
リハビリに関する知識や技術を学ぶ機会が多くなります。介護技術に加え、リハビリの技術・知識の理解を深めて、
より高度なケアを提供したいと考える人に向いています。
平均給与額を見ても、介護施設を運営する法人の中でも、
給与水準はやや高めです。営利を目的とした民間の法人と比べても月額約2万円も高いため、
安定した収入の中で働くことができるのもメリットと言えるでしょう。
また地域に密着した医療法人が運営しているケースも多く、
社会的な信用が高いところで働きたいと考える人にも向いています。
株式会社のメリット・向いている人
◆株式会社はこんな人におすすめ
・特色あるサービスを提供する施設で働きたい
・様々な価値観を持つ人と働きたい
・家族の都合で転居する可能性がある
株式会社による介護施設は、他業種からの参入が多いことから、社会福祉法人や医療法人とは異なるアプローチで運営するところが目立ちます。たとえば、富裕層に特化した高級有料老人ホーム、介護保険外のサービスに力を入れる事業所、レクリエーションや食事に力を入れる施設など。
他の施設にはない
特色のある介護や、「この施設でなければできない」という付加価値あるケアをしたいと考える人に向いています。介護業界とはまったく違う業界で勤務していた従業員も多く、
介護という枠組みを超えた柔軟な考えに触れることもできるでしょう。
給与面では、社会福祉法人や医療法人と比べると、平均でやや低いというデータがありますが、
全国規模で事業を展開し多くの従業員を抱える株式会社の場合、給与は高めという傾向があります。
事業拠点を多く持つ株式会社であれば、引っ越しなどで離れた地域に住まいを移すことになっても、
転居先の拠点で働き続けることができるというメリットもあります。
法人格の違いを理解し、転職活動に役立てよう!
法人格が違うと、運営する施設形態も異なり、働く側にとってもメリットや平均給与にも違いがあります。
しかし、たとえ同じ法人であっても、今後トップの方針が変わることによって、大きく異なる場合もあるかもしれません。
今回ご紹介したものはひとつの例として参考にし、気になる求人があれば施設や事業所に出向き、実際に自分の目で見て確かめてみるといいでしょう。
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