高齢者の生活に欠かせない福祉用具。福祉用具専門相談員とは、福祉用具のスペシャリストと言える職種です。
「介護未経験だけど高齢者に関わる仕事がしたい」「介護現場を離れても高齢者を支える仕事を続けたい」という人はいませんか?
この記事では、福祉用具のスペシャリストである福祉用具専門相談員の仕事内容・必要な資格・平均給与などの基本情報から、仕事のやりがいまで徹底的に解説します。
1 福祉用具専門相談員とは?
1-1そもそも福祉用具とは?
2 福祉用具専門相談員の仕事内容
3 福祉用具専門相談員の1日のスケジュール例
4 福祉用具専門相談員になるには
5 福祉用具専門相談員が働く場所
6 福祉用具専門相談員になるメリット
7 福祉用具専門相談員のやりがい
8 福祉用具専門相談員の平均給料
9 福祉用具専門相談員の仕事に関する疑問
10 福祉用具専門相談員に転職するときの履歴書の書き方
11 福祉用具専門相談員は自立を支援する仕事です
介護が必要になった方の生活を支えるために、様々な福祉用具が活用されています。
適切な福祉用具を選定し、その人の状態に合わせたサービス計画を作成するには、福祉用具についての専門的な知識が求められます。
福祉用具に関する専門的な知識を身に付け、ユーザーにアドバイスしたり福祉用具の選定を行なったりするのが、福祉用具専門相談員です。
福祉用具とは、介護が必要となった高齢者などが安心・安全な日常生活を送るため、生活動作を補助したり機能訓練をしたりする用具のことです。
2000年に発足した介護保険制度を活用し、利用する本人の要介護度や用具の種類によってレンタル・購入ができます。
福祉用具を使用する際には、本人の身体機能に合わせて、最適な福祉用具を選択することが大切です。
介護保険を利用した福祉用具の購入には、年間10万円と上限額が決まっているので、必要な福祉用具に優先順位をつけて選択します。最適なものを選択できないと、残存する機能を低下させたりQOLを低下させたりすることにつながってしまうため、気を付けて選ばなければなりません。
福祉用具は介護保険の給付対象となっています。用具の種別によって貸与(レンタル)になるものと、販売となるもの(特定福祉用具)があります。
福祉用具専門相談員の役割は、様々な種類の福祉用具を把握し利用者さんに適切な福祉用具を提供すること。具体的には下記のような仕事があります。
ここでは福祉用具専門相談員の詳しい仕事内容を紹介します。
適切な福祉用具を提供するには、まず、利用者さんの状態を把握することが重要です。
生活動作を確認しながら、利用者さん自身が持っている残存能力を最大限活用することを考えます。その上で、福祉用具専門相談員としての専門知識や、医療職やリハビリ職などの他職種からのアドバイスなどをもとに、最適な用具を選定していきます。
福祉用具を貸与する際には、「福祉用具サービス計画」が必要です。「福祉用具サービス計画」には、どのような目的で福祉用具を使用し、どのような効果が期待されるかを記載します。
福祉用具専門相談員は、ケアマネジャーが作成したケアプランをもとに「福祉用具サービス計画書」を作成し、利用者さんやケアマネジャーに説明・交付します。
福祉用具専門相談員は利用者宅を訪問し、利用者さんが正しく、安全に福祉用具を活用できるように取り扱いの説明を行ないます。
介護用ベッドや電動車いすなどの事故件数も多いため、安全な使用を促していきます。
利用者さんが安全に福祉用具を使用できているか、上手に活用できているかを確認するために、福祉用具専門相談員が定期的にモニタリングを行ないます。
電動ベッドのモーターの点検などだけでなく、杖のゴムがすり減っていないか、車いすのタイヤの空気圧は十分かなど細かく確認し、安全・快適に使用できるようメンテナンスします。
福祉用具専門相談員には、営業力も求められます。
要介護となった高齢者の方が介護サービスを受ける際には、担当のケアマネジャーが付きます。ケアマネジャーが作成したケアプランに沿って、必要な介護サービスや福祉用具が決定されるのです。
そのため、福祉用具専門相談員は介護施設や居宅介護支援事業所などのケアマネジャーへ営業を行ない、新規の取引先を開拓します。
居宅介護支援事業所や地域包括支援センター、介護施設等のケアマネジャーからニーズを掘り起こすことや、新しい商品のデモンストレーション、カタログやパンフレットの配布など、様々な営業活動を行ないます。
地域にアンテナを張り、どんなニーズがあるのかを察知し、フットワークよく対応していくことが大切です。
福祉用具専門相談員の1日のスケジュールの例を紹介します。
事業所によって細かい業務内容や流れは異なるため、気になる方は施設に直接問い合わせましょう。
朝礼を済ませた後は利用者宅を訪問し福祉用具に関する相談を受けたり、福祉用具の納品をしたりします。福祉用具専門相談員が営業も行なっている事業所では、営業先に訪問し新商品の案内も行ないます。そのほか、担当する案件によってはサービス担当者会議に参加することもあります。
帰社後は事業所内の会議や、福祉用具サービス計画書の作成など、事務作業をします。その後帰宅します。
福祉用具専門相談員になるには、福祉用具専門相談員指定講習を修了する、もしくは特定の介護・福祉に関する資格を取得している必要があります。
福祉用具専門相談員指定講習とは、「福祉用具専門相談員に必要な知識及び技術を有する者の養成を図ること」を目的とした講習で、介護保険法施行規則第22条で定められています。都道府県が指定した事業者・研修機関で講習を受けることができます。詳しくは各都道府県の公式ホームページに記載されています。
ここでは、実際に福祉用具専門相談員指定講習を受講する方法や費用などについて詳しく紹介していきます。
◆福祉用具専門相談員指定講習の受講期間
合計50時間の講習を受講する必要があります。多くの場合は連続した5日間から7日間程度の受講期間を要します。なかには少しずつ短時間で受講していき、最長2ヶ月以上かけて取得する講座も。
年に複数回開催されているので、自身の都合に合わせてタイミングの良い時期の選択が可能です。事前に申し込みが必要であるため、受講枠が埋まる前に早めに申し込みましょう。
◆福祉用具専門相談員指定講習の受講費用
受講費用は通常4~6万円となっています。講習事業者や開催人数、受講方法(オンライン・講習参加等)によって多少費用が前後するようです。
◆福祉用具専門相談員指定講が受けられる場所
厚生労働省が指定しているカリキュラム内容を都道府県が指定する事業者が開催する講習で受講する必要があります。多くの場合は、各都道府県の公式ホームページに記載されているので確認してみましょう。
受講会場が遠方で参加できない方のために、オンライン講習を開催している事業者もあるので安心です。
◆福祉用具専門相談員指定講習の受講要件
年齢や学歴・職務経歴を含めて、受講要件の定めは特にありません。そのため、誰でも受講できます。
◆講習後の試験の難易度は?
福祉用具専門相談員の合格率は「非公開」となっていますが、一般的に合格率は非常に高いと言われています。試験は福祉用具専門相談員指定講習をしっかりと受講すれば合格できる内容です。
◆修了後の更新研修はある?
現時点では更新研修を受ける義務はありません。しかし、2022年に開催された厚生労働省の有識者会議で、福祉用具専門相談員の資格を「更新制」にすべきであるという提案がされました。今後、更新研修が必須になる可能性も考えられます。
福祉用具専門相談員の業務に当たれる資格は下記の7種類です。
准看護師以外の資格は国家資格です。
これらの資格があれば、福祉用具専門相談員指定講習を受講しなくても福祉用具専門相談員としての業務ができます。
なお、2015年の制度変更以降、ホームヘルパー1級/2級・介護職員初任者研修修了者・介護職員基礎研修修了者は福祉用具専門相談員の要件と認められなくなったため、注意が必要です。
福祉用具専門相談員の主な勤務先は、介護保険の指定を受けた福祉用具貸与・販売事業所です。福祉用具貸与・販売事業所には、福祉用具専門相談員が2名以上配置されていなくてはいけないという、人員基準があります。
なお、介護関連の法人以外でも、スーパーやホームセンター、リフォーム業者など、様々な業者が介護保険の指定を受けて福祉用具貸与・販売の事業を行っています。それに伴い、福祉用具専門相談員の活躍の場も広がっているのが現状です。
福祉用具専門相談員になるメリットには下記の2つがあります。
ここでは、福祉用具専門相談員として働くメリットについて詳しく解説します。
福祉用具専門相談員として身に付けた知識は、介護にも活かせます。
家族に介護が必要な方がいる場合、福祉用具の知識を活かしてより良い生活が送れるような福祉用具を提案ができるようになるでしょう。また、介護現場では利用者に適した福祉用具を提案することで、利用者本人だけでなく、介護している他の家族の負担も軽減できます。
先述した通り、福祉用具専門相談員は福祉用具貸与・販売事業所だけでなく、ホームセンターやリフォーム業者でも活躍している職業です。福祉用具専門相談員として働いた経験があれば、介護・福祉業界の知識や経験を持つ貴重な人材として、他業界への転職でも有利になるでしょう。
どんな職業であってもやりがいがなければ飽きてしまいます。福祉用具専門相談員の場合は、下記のようなやりがいを感じられます。
ここでは、福祉用具専門相談員のやりがいについて詳しく解説します。
福祉用具専門相談員として最も大きなやりがいは、利用者さんに喜んでもらえることでしょう。利用者さんが福祉用具を使うことで、今までできなかったことが1人でできるようになることも。
福祉用具の使用は生活の質(QOL)の向上を実感しやすいため、福祉用具専門相談員は利用者さんから感謝の言葉をもらうことも多いです。
福祉用具専門相談員は、福祉用具の提案やメンテナンスの場面などで、利用者さんと一対一でじっくりかかわる時間を持てます。
身体状況の変化によって生まれる新たな課題に対しても、じっくり向き合い、利用者さんの生活環境の改善に努められます。
福祉用具のニーズはますます多様化しています。
福祉用具専門相談員は、ケアマネジャーや看護師・リハビリ専門職等の様々な専門職と連携を取り、福祉用具を通して課題解決に努めます。
成功も失敗も含めて、そのひとつひとつがプロフェッショナルとしての大きな経験となり、自分自身の成長を実感できるでしょう。
福祉用具の事業者には、利用者さんを支援するだけでなく、ケアマネジャーや介護施設等との協働も期待されています。
地域包括支援センター主催の福祉用具展示会で講師を務めることや、介護施設で福祉用具のデモンストレーションを行なうことなどもあります。
こういったコラボレーションの実現も地道な営業活動が実を結んだ結果であり、福祉用具専門相談員としての大きな達成感が得られるでしょう。
介護求人ナビに掲載されている求人情報から算出した情報によると、福祉用具専門相談員の正社員の平均年収は307万円、パート・アルバイトの平均時給は1,139円でした。
介護職・へルパーの平均年収は361万円のため、福祉用具専門相談員の給料は介護業界の中では比較的低い傾向にあるといえます。
福祉用具専門相談員は休日対応や残業なども多い職種です。職場によっては残業代や休日出勤手当により、平均年収よりもさらに収入が見込める可能性もあります。
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ここでは、福祉用具専門相談員の仕事に関するよくある疑問について回答します。
事業所によっても異なりますが、営業で一定のノルマを課している場合や、一定の件数以上は歩合で給料が発生する場合もあります。営業成績が直接給料に結びつくのは介護職員との大きな違いでしょう。
福祉用具専門相談員の仕事について、「ノルマがきつそう」という不安を挙げる人も少なくありません。営業の成果が目に見えるというのはプレッシャーになる半面、達成した喜びも大きくなります。営業目標を自分自身のモチベーションに変え、成長の糧にしていけると良いかもしれません。
介護職員など他の職種から福祉用具専門相談員になる場合、営業経験がないことに不安を感じるかもしれません。
福祉用具専門相談員の営業は、営業先が担当地域内の居宅介護支援事業所や地域包括支援センターがほとんどです。利用者さんの近況を報告するなど、介護職として行ってきた多職種連携の延長上にあるため、営業の経験がなくても苦にはなりにくいでしょう。
福祉用具専門相談員のなかには「営業経験はあるけれど、介護業界での業務経験がない」という人いるため、介護業界未経験でも大丈夫です。
介護の知識がないから不安…というとき、わからないことはきちんと確認しましょう。
「どんな用具が使えると助かるのか」、「この利用者さんに対してはどんな点を注意しなければいけないのか」など、ケアマネジャーなどに質問してみることもひとつの勉強方法です。他の職種の職員とも積極的にコミュニケーションを取るようにしましょう。
また、福祉用具の開発は日進月歩で進んでいます。新たな情報を吸収しながら、最適な福祉用具を提案できるように勉強を重ねていくことも重要です。
実際に「福祉用具専門相談員」の求人を見てみると、介護の資格を応募資格に課していない施設が多いです。
しかし、なかには「介護福祉士があれば尚可」「介護職経験者歓迎」「多忙時には介護現場と兼務」と記載されている場合もあるので、介護関連の資格を有していると就職に有利になることは間違いないでしょう。
特に「多忙時には介護現場と兼務」と書かれてある施設では、介護関連資格の保持者は重宝されます。
また、仕事を進めるうえでも介護関連資格があると、より良い住宅環境や福祉用具を提案できる敏腕な福祉用具専門相談員を目指すことが可能です。
もちろん、実際の求人に「未経験歓迎」「介護職未経験可」などと書かれている場合もあるので、学習意欲の高い方は誰でも福祉用具専門相談員に挑戦できます。
福祉用具専門相談員の講習が終了している方は「○○年●月 福祉用具専門相談員指定講習 受講済」「○○年●月 福祉用具専門相談員指定講習 修了」のように書きます。
記載する際には、履歴書の資格欄に書くようにしましょう。
また、いつ取得したのかがわかるように記載しておくことも重要です。平成27年以降の新カリキュラムで受講した方は、特に記載しておくと最新の教育を受けたことが先方に伝わります。(※旧カリキュラムの方が不利になるというわけではありません)
指定されている国家資格を活かして福祉用具専門相談員の業務を行ないたい場合には、有する資格のみ記載しましょう。
自己PRで介護の仕事経験や、職場で福祉用具を使った職務経験などを記載しておけば、より効果的です。
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『住み慣れた家で、快適に暮らしたい。』『人の力を借りなくても、1人でできるようになりたい。』利用者さんの自立支援を支えるのが福祉用具です。
そして、利用者さんを支える福祉用具を選定し、最適な状態に保つことが福祉用具専門相談員の役割です。
利用者さんの持つ可能性を広げ、利用者さんが望む生活を実現するお手伝いができる。
福祉用具専門相談員とはそのような魅力を持った仕事であり、地域包括ケアシステムでも頼れる存在なのです。
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