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2018年09月05日

天職だと思った理学療法士から介護職へ転職を決めた瞬間~転職体験Wさん1 | 「介護求人ナビ 介護転職お役立ち情報」



◆訪問リハビリテーション事業所(正職員/理学療法士) → 訪問介護事業所(正職員/介護職・サービス提供責任者)

W・Kさん(男性・33歳)
●訪問リハビリテーション事業所(勤務期間:3年/年収約350万円/ボーナスあり)
●訪問介護事業所(勤務期間:4年/年収約470万円/サービス提供責任者手当・ボーナスあり)

介護業界以外でのその他経験:回復期病院(理学療法士)
保有資格:理学療法士、実務者研修
家族構成:妻、子ども4人(8歳・6歳・4歳・2歳)

*W・Kさんの「転職 成功・失敗 体験談」…1回目、2回目3回目4回目(最終回)はこちら

【理学療法士になったきっかけ】家族のすすめで医療職を目指すことに

高校で、卒業後の進路を決めるときに、将来何をしていいのかまったくわからず、当惑していました。
大学に行くための受験勉強をする気はあまりなかったし、就職もしたくない。
それなら専門学校へ行こう、と思ったけれど、どんな専門学校に行けばいいのかも見当がつかなくて。

そんなとき、親から「医療職の資格を取ったら?」と言われました。
母は病院で医療事務をしていて、国家資格を持った医療職がたくさん働いているのを目にしていたのです。
「理学療法士や作業療法士、言語聴覚士などの医療職は、国家資格を持ってはじめて専門職として働くことができる。資格を持っていればどこの病院でも働けるし、自営することもできるから」というのが理由でした。

なるほど、と思いました。
国家資格のことなど考えてもみなかったけれど、資格を持っていれば転職なども苦労しなくてすむかも……、そんな安易な気持ちで、母の提案に乗りました。

どんな資格を取ろうかと考えましたが、理学療法士が一番ポピュラーなのかと思い、理学療法士の資格を取得できる専門学校に3年間通うことにしました。


【はじめての就職】理学療法士は天職!だけど、退院後の患者さんが気になる

患者さんに幸せになってもらうための接し方を学ぶ

専門学校を卒業後、理学療法士の国家資格を取得し、最初に就職したのは、地元の回復期病院(リハビリテーション病院)でした。
地元でとても評判がよく、実績のある病院で、ここに就職できたのは幸運でした。

先輩の指導もすばらしかった。
まず、技術よりも前に、「患者さんとどう接するかのマインドの部分が大事なのだ」と教えてもらいました。
たとえば、患者さんを支えるとき、どこに手を入れれば不快感がなく、安全に、安心に接することができるか。それを考えるときに、身体的なメカニズムより、まず患者さんの気持ちを優先しろ、と。
どこを持ってもらえば安心できるのか、どこを触られたら気分が悪いのか。教科書で教わったことだけに頼らず、利用者さんの表情や言葉に敏感になれ、と教え込まれました。

目から鱗でした。すごくしっくりきました。
理学療法士の役割とは、患者さんが単に歩けるようになるのを技術で促すのではなくて、ご自身の意志で歩きたいと思っていただき、歩くのが楽しくなるような訓練を提供し、幸せな気持ちになっていただくことなのだ、と。

ああ、自分はいい仕事を選んだな、天職を見つけた、と思えました。

回復期病院を退院した後のことを知りたい

回復期病院での5年間で、僕は理学療法士としての基礎を学び、患者さんの身体的な回復を支えることの尊さを学ばせてもらい、実践してきました。

しかし、これはあくまでも病院という「異空間」でのことです。
患者さんは、回復期病院での訓練が終わると、病状に合わせ、自宅に帰る、老人ホームに入る、療養病院に入るなど、いろいろな道をたどります。
その行先で、僕のやってきたことはどう生かされているのか、ご自身なりの訓練は続いているのか。
それを見届けたくなり、転職を考えました。


【はじめての転職】自宅での生活を支えるため、訪問リハの事業所へ

自宅でのリハビリを通して生活をサポートしたい

リハビリテーションは、病院などで行うほか、退院後に自宅で行うこともできます。
僕は回復期病院などを退院した後の患者さんの自宅に訪問して、自宅でどう訓練をしていくのか、そのサポートをしていきたいと思いました。

それで、訪問リハビリテーション事業所のある病院に転職したんです。
ここは、訪問だけでなく、療養病床や回復期病院なども含んだ、幅広いリハビリテーションを提供する組織。
まずは、以前と同じように回復期病院で、その後、療養病床で理学療法士としての経験を経た後、念願の訪問リハビリテーションの事業所に異動することになりました。

患者さんの中には、病院では訓練の成果が出て、良い状態で家に帰っても、自宅での訓練の継続が難しく、結局歩けなくなる、手がうまく使えなくなるような人も多いのです。
そこをアドバイスし、もっと動けてもっと生活がうまくいくように、自宅を訪問し、サポートしたいと思いました。

訪問リハでの衝撃!病院での訓練はなんだったのか…

実際に自宅を訪問するようになって、僕は打ちのめされました。
病院ではマジメにリハビリテーションをしていた方たちが、家に帰れば、指導の通りには体を動かしていない。
「1日5分でいいんです、やりましょう」「はい」という会話をしたとしても、まったくやらなくなる人がほとんどです。

入院中にご家族も含めて綿密に計算して取り付けた手すりがタオル掛けになっている、「買い物も自分の足で歩いて行きたい」という患者さんにすすめたシルバーカーが野菜入れとしてジャガイモやタマネギの保存場所になっているだけで、まったく使われていない、ということも。

自宅でのリハビリメニューが活かされていない、という現実

週1回、訪問リハビリテーションに伺うのですが、寝たままマッサージを受けるのはいいのだけれど、日常的に身体を動かすようなトレーニングは「めんどくさい」とおっしゃるのです。
ご家族も、「最初のうちはやらせたいと思っていましたが、『やらないとダメ!』と言いすぎるとケンカになる。そのうち、言うのがおっくうになってしまいました」と。
綿密に考えたトレーニングメニューは、「理学療法士さんがせっかく考えてくれたからもらっておいたけど、そうそうやれるもんじゃない」と、患者さんは小さな声で言うのです。

「リハビリテーションで患者さんの生活を支える」なんていい気になっていたけれど、まったく思っていた通りになっていない。そう痛感させられました。


【介護職への目覚め】日常生活に寄り添えるのは介護職ではないかと気付く



日常生活の大変さに振り回される患者さんを目の当たりに

患者さんたちは、自宅に帰ると、生活そのものが大変なのです。
不自由な手で調理をすることも、動きにくい足でトイレに行くことも、不便に感じながらの生活です。

訓練どおりに足を出せば少し足は動くけれど、だからといってこれまでできていた洗濯や掃除がスイスイできるわけではない。
家の中は少しずつ荒れ、家族に頼るようになり、だんだん動けなくなる。
「買い物はどうする?」「入浴もちょっとこわい」そんな自分を心細く思い、不安感を抱えながら生活しています。

自宅での生活に寄り添えるのは“介護職”かもしれない

患者さんの気持ちもわからず、誇らしげに自分の作ったトレーニングメニューを語っていた自分が恥ずかしくなりました。
患者さんに幸せになってもらうには、自宅での生活全体を見て、必要なところは手助けし、できそうなことは励ましてご自身でやってもらうことが大事。

自宅での生活の多くは、理学療法士がどうにかすることではなく、食事や排せつの手助けを含め、介護職が寄り添い、実現していくことだ、と気づいたのです。

自分が実現したいと思うことを成し遂げるには、理学療法士ではなくて、介護職になったほうがいいのでは……?という思いはどんどん膨らみ、止められなくなりました。


【介護職への転職のきっかけ】介護への思いを聞いてくれた社長との出会い

リハビリテーションのあり方に悩みさまざまな勉強会へ参加

訪問リハビリテーションの仕事に悩み、解決方法を模索して、さまざまな勉強会や研修にでかけていました。
そんなとき、訪問リハビリテーションの事業所とともに、訪問介護の事業所や居宅介護支援事業所も経営している会社の社長さんに勉強会の席で出会ったのです。

勉強会で意見を交換するうち、その社長さんの経営ポリシーや会社の事業内容にひかれ、この人の率いる事業所で働きたい!と痛切に思いました。

訪問リハ・訪問介護の事業所を見て、転職を決意

勉強会が終わってからその社長さんに声をかけて名刺交換し、2人で飲みに行くことに。
今の仕事の悩みや、「今後、介護職に転職したほうがいいのではないかと思っている」という気持ちも伝えました。

そんな僕の思いをしっかりと聞いてくれた社長さん。
「ときどき会おうよ。そして、話し合ううちに、うちの会社に来たいと思うのなら、来ればいいじゃない。急がないで、ゆっくり考えなさい」と言ってくれたのです。
ありがたい言葉どおり、僕は何度かその事業所を見学させていただき、社長さんとも何度も話し合い、そして「入社させてください」とお願いしたんです。

次回は、現在の職場での環境や働き方について、Wさんの思いをお伝えします。

<三輪 泉(ライター・社会福祉士)>

*W・Kさんの「転職 成功・失敗 体験談」…1回目、2回目3回目4回目(最終回)はこちら



●先輩たちの職場選びの失敗事例に学ぼう
→ 「こんなはずじゃなかった…」 転職先選び 私の失敗談


●○● 介護業界で転職する時の 基本ノウハウ ●○●

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