高級和食の店のフロント勤務から、老健へ。180度違う職場に勤務し始めたNさん。100床の大きな老人ホームでの勤務に戸惑うのが普通ですが、素直で密かに粘り強い性格で、周囲に溶け込んでいきます。Nさんはここで、5年のキャリアを積み、ベテランの介護職になっていきます。本来なら落ち込んでしまいそうな事態を乗り切る力は、ここで養われました。
*N・Rさんの「私が転職した理由」…1回目、2回目、3回目、4回目(最終回)はこちら
N・Rさん(37歳)の転職経験
大学卒業後、1年間、百貨店でケーキ販売の仕事に就く
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高級和食店のフロントの仕事を3年務める
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和食店在職中にヘルパー2級を取得し、介護老人保険施設(老健)に5年間勤務。介護福祉士の資格を取得
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高級と言われる介護付き有料老人ホームに5年間勤務
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住宅型有料老人ホームに併設する訪問介護事業所に1年余勤務。現在、介護職を続けながら、ケアマネジャー資格取得の準備中
介護も医療も学べる老健で、介護の仕事を開始
介護職への転身について話すと、「なぜ最初に老健に就職したの?」とよく聞かれます。実は、あまり深く考えていなかったと思います。家から近いところがいい、正社員として勤務したい、このふたつを満たしてくれるところを探したら、自転車で通えるこの老健になりました。
でも、結果的には、私のスタートとして、老健はよかったと思います。介護の知識や技術を学べるのはもちろん、看護業務も身近です。医療の知識もつきますから、利用者さんを介護と医療、両方の立場からみることができます。また、デイケアも併設していたので、レクリエーションでもてなすこともできました。
看護師さんによくしてもらって、医療のわからないところをたくさん教えていただきました。ドクターをはじめ、理学療法士(PT)や作業療法士(OT)、言語聴覚士(ST)の方々とも連携ができ、多方面から利用者さんを支える介護ができたと思っています。
ただ、はじめて介護の業界に飛び込んだわけで、最初はわからないことだらけでした。自分の未熟さにがっかりしたり、焦りを感じることもしばしば。でも、ちょうど同時期に入った同僚の女性が、とても熱心で明るい人だったんですね。
「おもしろい教科書を見つけたよ。仕事に生かせそう」と教えてくれたり、「学校で習ったことと今やっていることが違うのは、どういう意味があるのかな」なんて、話しかけてくれたり。彼女の熱意に影響されて、私もどんどん前向きになっていきました。一緒にご飯を食べに行くことも多く、仲間を得た、といううれしい実感がありましたね。
介護職になってからおおらかな性格に
もともと人付き合いが得意なほうではありませんし、黙々と仕事をしてしまうほうなんです。でも、この職場はさまざまな専門職と連携します。コミュニケーション能力が必要だと感じますね。それは、前職の高級和食店で学んだ接客を活かすことで乗り切れました。どんな方とでも仲良くしようと思い、丁寧に接することで、仲良くなることってできるものだと思うんです。私自身も、関わる方を不快にさせないように心がけました。
また、何事も根拠を持って取り組んでいれば、信頼していただけるものです。仕事で失敗し、上司に叱られることもありましたが、自分なりに「利用者さんのために、こういう目的でやっていた」ということをはっきり伝えると、上司は理解を示してくれました。こうして、上司や同僚の方々に助けていただきながら、老健で5年を過ごしました。
私は、体力があるほうではないし、運動神経もよくないのですが、介護の仕事をやっているうちにタフになって、健康な状態で仕事に取り組むことができました。介護の仕事を始めてから、古い友達に会うと、「以前とは変わったね、いい感じになったよ」と言われるようになりました。これまでは、真面目がとりえ、というような面白みのない性格でしたが、利用者さんに楽しんでいただくために努力をしているうちに、ユーモアを出せるようになったんでしょうね。
また、生死に関わる仕事でもあるので、物事を冷静に判断する力が鍛えられ、ちょっとしたことで動揺しなくなりました。以前より、おおらかな性格になれたのかもしれません。介護の仕事は、人を成長させるのだなぁ、としみじみ思います。
ただ、老健は、病院を退院してから、リハビリや医療を受けて自宅に戻れるようにケアするところ。在宅復帰を目的にしているので、介護をしていても、利用者さんの最後まで見届けることはできません。生活のお手伝いをするというより、自宅に戻るための橋渡し、というような意味合いが強い仕事です。また、100床もあるので、利用者さんおひとりおひとりに深く関わることがなかなかできない環境でもありました。
もっときめこまかな介護がしたい。おひとりずつじっくり関わり、心地よくなっていただけるような介護がしたいという思いが募ります。それに、そもそも「介護とは何か」「回復させるということは?」という根源的な問題で悩むようになって。「自分はずっと老健にいていいのか?」と疑問を感じるようになりました。
次回は高級有料老人ホームに転職するNさんをお伝えします。
*N・Rさんの「私が転職した理由」…
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