目の前のNさんは、ゆったりと微笑み、物腰のやわらかな女性。ハイグレードな住宅型有料老人ホームに勤務しているというのも、納得です。かつては高級和食の店のフロント勤務だったというNさん。どう見ても控えめなのに、介護業界へと転身するそのバイタリティは何処に潜んでいるのでしょうか。4回に分けて、じっくりと聞いてみました。
*N・Rさんの「私が転職した理由」…1回目、2回目、3回目、4回目(最終回)はこちら
N・Rさん(37歳)の転職経験
大学卒業後、1年間、百貨店でケーキ販売の仕事に就く
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高級和食店のフロントの仕事を3年務める
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和食店在職中にヘルパー2級を取得し、介護老人保険施設(老健)に5年間勤務。介護福祉士の資格を取得
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高級と言われる介護付き有料老人ホームに5年間勤務
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住宅型有料老人ホームに併設する訪問介護事業所に1年余勤務。現在、介護職を続けながら、ケアマネジャー資格取得の準備中
ていねいなもてなしを仕事で極めたくて
大学時代は、航空会社の客室乗務員になりたかったんです。
華やかな世界に憧れたのか、って? いえ、そういうのではなくて。立ち振る舞いが美しく、もてなしとしても最高の接客の仕事がしたかったのだと思います。私、人見知りなんですが、人と接する仕事が好きなんですね。
私が接遇をすることで、お客様に心地よさを感じていただいて、いい時間を過ごしていただきたい。そう思ったんです。
けれど、航空会社をいくつか受けてみたものの、うまくいかなくて。
結局、伝統のあるウェディング会社のケーキ部門に勤務することになりました。百貨店でケーキを1年ぐらい販売していましたね。
でも、ケーキの販売だけでは物足りなさを感じていました。お客様はご自分でケーキを選ぶことが多く、それを包み、心地よくお渡しするのが私の主な仕事。もっとお客様に深く関わりたいと思い、1年後には、高級和食店のフロントの仕事に就きました。
お客様のご案内、電話の応対、会計などが主な仕事。いかにお客様に気持ちよく過ごしていただけるかを考えて接遇をしていました。
祖母が認知症になり、介護の仕事が急に身近に
でも、2年を過ぎると慣れてきて、仕事に新鮮味を感じなくなってきてしまって。今後、どうしようかな…と思っているちょうどその頃、祖母の体調が悪くなり始めていたんです。
祖母は私の家の近くで、叔母といっしょに住んでいました。
学生時代はあまり気にしていなかったのですが、認知症がだいぶ進んでいたんですね。働きながら介護をしていた叔母もとても大変で、そろそろ老人ホームへの入居を考え始めた頃だったんです。
あのやさしい祖母が認知症で、もう家で暮らせないほどになっていたなんて。思えば、高校生ぐらいになると、同じことを何度も繰り返して言うようになっていました。
十代の私は子どもで、繰り返しの言葉に相槌を打って、何回も聞くのが苦痛で、だんだん祖母の家から足が遠のいてしまったんです。社会人になってからも、近くに住んでいるのに、忙しさを理由にあまり足を運んでいなくて。
若い頃、家事も育児もきちんとやっていた祖母は、訪問のヘルパーさんが来るのが耐えられなかったようでした。他人の介護を受け付けず、ヘルパーさんを泥棒扱いしたり。その行動は、祖母が自分の認知症という病気に苦しんでいるからだと思ったんです。
もっと早く気づいて、あたたかく接していればよかった。せめて、祖母にもっと安らいで欲しい。
そのために、自分が祖母の世話を少し担いたい。そんな気持ちもあって、ヘルパー2級(現在の介護職員初任者研修に相当)の資格を取ろうと考えました。高級和食店の仕事も3年目になるとだいぶ自由がきき、働きながら講座に通うことも許してもらえました。
介護の勉強をしてみると、がぜん、介護の仕事をしてみたくなりました。もともと、福祉には興味があったんです。接遇の仕事が好きなので、人に寄り添ってお世話するのは、向いていると感じました。
私のように、他職種に就いて、介護に興味を持ち、介護業界に入る人は多いから、27歳になった当時でも臆せずやれる気がしていました。
やるなら、今。30歳になる前に、手応えのある介護の仕事にチャレンジしたい。そう思って、ヘルパー2級の資格取得後、ハローワークに行って、介護の仕事を探しました。面接に行ったのは、家からの通勤も楽な介護老人保険施設(老健)。
実は知らなかったのですが、この老健に、祖母が入居したばかりだったんです。びっくりしましたが、面接をしてくれた管理者の方は、「かまいませんよ。おばあさまと別のフロアの担当になればいいでしょう」と言ってくれ、私は祖母のいる老健に勤務することになりました。
次回はNさんの老健での働きぶりをお伝えします。
*N・Rさんの「私が転職した理由」…1回目、
2回目、
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