毎回、介護にまつわる問題点やちょっと困った介護スタッフの珍行動、介護現場での珍事件などを紹介するこのコーナー。
今週は、「将棋ができるスタッフが大人気」という話題について紹介します。
見る人、やる人、口を出す人など、将棋レクは大盛り上がり
少し前に、巷の話題を独占した将棋の藤井聡太四段。史上最年少でプロ棋士になり、これまでの連勝記録をいきなり破ってしまうなど、その活躍が連日のように報じられた。
そんな話題沸騰中の将棋と介護業界はとても親和性が高いようだ。都内の介護付き有料老人ホームで働く40代の女性・ハセガワさんは言う。
「藤井クンのニュースはウチの施設でもよく話題になっていました。これまで将棋の話なんてまったくしたことがなかった女性が、『あの子はまた勝ったの?』『中学生なのにスゴいわね~』と、将棋の話をしてきたので、とても驚きました」
老人ホームというと、ついつい特別な場所を想像しがちだが、「話すネタは世間とちっとも変わらない」と話すハセガワさん。
しかし将棋に関しては、世間よりも盛り上がる下地があるようだ。その理由について、ハセガワさんはこう話す。
「いま老人ホームに入居している男性のお年寄りは、囲碁、将棋、麻雀、ゴルフなんかが主な娯楽だった世代。
施設のレクリエーションで将棋を楽しむ人も多く、“実際に将棋を指す人”“周りであれこれ言う人”“その様子を見守る人”といった具合に、将棋で盛り上がっています」
将棋の強い男性介護職との対局は順番待ちに…
残念なことにハセガワさんはまったく将棋がわからないが、施設にはひとり、腕に自信がある男性スタッフがいる。
そんな彼は昨今の“藤井フィーバー”もあって、ちょっとした人気者になっているそうだ。
「レクリエーションでは将棋の先生を呼んでいるのですが、先生が来るのは月1回だけ。
それでは物足りない入居者たちから、『1局やろうよ』『今度これ(将棋を指す仕草)、お願いね』と、しょっちゅう声をかけられているみたいなんです。
彼も仕事が山ほどあるので、あまり相手はできないのですが、順番にリクエストに応えています」
その男性スタッフは、こんなエピソードを話してくれた。
「お年寄りの中に、『将棋なんてやるのは子どもの時以来だ』という人がいたのですが、やってみたらメチャクチャ強かったんです。しかも、普段は手が震えているのに、将棋のときだけ震えも止まるみたいで。
そのおじいさんも自分でビックリしていましたが、将棋って一度覚えると忘れないみたいですね。『こういう時はどうするんだったかな~』と言いながら、しっかりとした手つきで、正しい手を指してきます」
ちなみに将棋界には、介護士から41歳でプロ棋士になった、今泉健司四段のような例もある。介護業界には、さまざまな趣味を受け入れる土壌があるようだ。