毎回、介護にまつわる問題点やちょっと困った介護スタッフの珍行動、介護現場での珍事件などを紹介するこのコーナー。
今週は、「音大卒の女性がなぜ介護業界に」という話題について紹介します。
ピアノが得意で音大に進んだのに…
大学進学率が50%以上に達するなか、音楽、絵画、映像など、芸術系の大学を目指す学生も少なくない。
そのジャンルは多岐に及ぶが、そういった芸術系の学校を卒業したにも関わらず、介護業界で働く人が実は意外にいるという。
現在、神奈川県の介護付き有料老人ホームで働くユキさんも、そんな経歴の持ち主。ユキさんはなぜ介護業界に飛び込んだのか。
埼玉県で生まれ育ち、子どもの頃から親のすすめでピアノを習っていたというユキさん。
高校生の時に音大に進むことを決めた彼女は、見事に都内の音大のピアノ科に合格したものの、すぐに厳しい現実を知らされることになる。
ユキさんはこう話す。
「同級生の中には、毎日5~6時間ピアノを弾くのは当たり前だという子がゴロゴロいるんです。
本当に上手な子でも血の滲むような努力をしているのを見て、『私はプロの演奏家として食べていくのは無理なんだ』ということがすぐにわかりました。
そして就職活動でまた現実を知ることになります。学校の音楽教師の資格は取りましたが、募集は限りなくゼロに近く、“超”がつくほど狭き門。
そこで一般企業も面接しました。ですが、『音大のピアノ科が、ウチの会社で何ができるの?』という感じでした」
結局、ピアノ教室の講師という「ピアノ科の就職先の王道」をたどったユキさんだが、「給料が激安」だったため、別の仕事を探す必要性にかられる。
そんな時に浮かんだのが、介護施設だった。
音大卒が、介護の仕事を選んだ理由とは?
「実は学生時代、老人ホームで演奏をしたことがあったんです。
大学時代には、介護施設、幼稚園や小学校、イベントなどで演奏するバイトがたくさんあって、先生からも『人前で演奏しないと上手くならない』と、しょっちゅう言われていたので、色々なところで演奏していたんですね。
その中でも、お年寄りの楽しそうな表情や、ふれあいが忘れられなかったこともあって、介護施設の面接を受けました。
すると、音大卒がまったく問題にされないばかりか、『弾いてもらえたら入居者もきっと喜ぶわ』と言ってもらえたんです。
それ以来、もう10年以上この仕事を続けています」
ユキさんは、入居者の前で定期的にピアノを弾くだけでなく、かつての同級生や後輩を招いてのミニコンサートなどもマネージメントしているのだそう。
「プレッシャーに弱くて、本番ではいつも失敗していた」というユキさんだが、入居者の前でピアノを弾くのは、彼女にとって大きな楽しみになっているそうで、施設の演奏会を見に来た同級生には、「アナタってそんなに楽しそうに弾けたのね。もしかしたら(学生時代より)今のほうが(演奏が)上手いかも」と言われたそうだ。
「結果的に、やりがいのある仕事を見つけた」というユキさん。
どんなことでも自分の特技を活かせれば、介護の仕事がもっと楽しくなるのかもしれない。
公開日:2017/4/10
最終更新日:2019/10/8
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