毎回、介護にまつわる問題点やちょっと困った介護スタッフの珍行動、介護現場での珍事件などを紹介するこのコーナー。
今週は、
「子育てからの仕事復帰がうまくいく事業所とは?」という話題を紹介します。
女性の社会進出は進んだ?
先ごろ辞任を発表した安倍晋三氏が、首相時代に力を入れたのが女性の社会進出。安倍氏は
「すべての女性が輝く社会づくり」というキャッチフレーズを掲げ、女性を積極的に登用する取り組みを推進したが、どれだけ男女同権を訴えても、子どもを生むのは女性で、どうしても“空白期間”が生まれるのは避けられない。
女性が多い介護業界。復職希望者も多数!
現在、都内の介護付き有料老人ホームで働くスギノさんは、高校を出て介護業界に就職し、21歳で結婚。
22歳で第一子が生まれて一旦休職し、一昨年に仕事に復帰した。
子育てで一旦は仕事を離れ、その後復職する女性は多いが、彼女はどうやってそれをスムーズに行なったのか?
「私は両親が共働きで、いつも祖父母の家に預けられており、“おばあちゃん子”として育ちました。そのおばあちゃんが病気で寝たきりになってしまったことがきっかけで、介護の仕事をしたいと思うようになり、介護業界に進みました」
介護業界には、家族や親族の介護をしたことがきっかけで、それを職業にする道を選んだ人が少なくない。スギノさんもその1人だが、復職して2年後には双子を出産。3人の子どもを抱えて仕事に出るのは難しく、仕事に復帰するまでには5年を要したという。
双子を出産!3人子育てしながら復職は難しい?
「保育園の中には、生後数か月から子どもを受け入れてくれるところもありますが、熱が出たり、病気になったりすることも多く、すぐにフルタイムの仕事に戻るのは厳しいな、と。気がつけばあっという間に5年が経ってしまいました。
しかし、いつかは仕事に復帰したいという思いはずっとあり、パートで働けるところを探していると、出産前に働いていた会社から『ウチで働かない?』と、声を掛けて頂きました。
当時の同僚と交友があり、私が『もう1度働きたい』と話すと、会社に話してくれたようで、一も二もなくお願いしました」
スギノさんにとっては願ってもない申し出だったが、会社側としても、勝手知ったる人物の復帰は大歓迎。
しかも、スギノさんの希望をことごとく受け入れてくれたという。
週5日、定時帰宅、発熱でお休みも全部OK!
「下の双子は保育園に預けていますが、上の子は小学生なので、学校がある日は15時には家に帰ってきますし、夏休みや冬休みは家にいます。
その子の世話をしなくてはいけないので、勤務は週5日で1日5~6時間、必ず定時で上がれること、子どもが病気になって“突休”になる可能性があることなど、こちらの希望はすべて認めてもらえました」
スギノさんのタイムスケジュールは以下の通りだ。
・8:00 自宅を出発。子どもを保育園に預ける。
・8:30 出勤。部屋の清掃、検温、口腔ケア、入浴介助、昼食、体操、レクリエーションなど。
・13:30~14:30 退社。保育園に子どもを迎えに行き、買い物などをして帰宅。
このようにして、スギノさんは自分が思い描く形で仕事復帰することができたが、それにはいくつかの幸運が重なっていたという。
3人育児で復職成功、そのワケは?
「私が復帰した施設は
社長が女性で、働きながら子育てをした経験の持ち主。ワーキングマザーを応援したいという気持ちがとても強く、働き方に関しても融通を利かせてもらえますし、育児手当、進学祝いなど、金銭的なサポートもあります。
また、復帰は5年ぶりでしたが、スタッフの大半は顔見知りでした。
それはとても心強かったですし、スタッフの定着率が良いということは、客観的に見ても働きやすい職場だということ。
ワーキングマザーやシングルマザーを積極的に雇い、彼女たちを手厚くサポートすることで、“女性に優しい職場”という評判を聞きつけた女性が集まる好循環が生まれており、人手不足に陥る状況も避けられています」
スギノさんの子育ては今しばらく続くため、フルタイムでの勤務は先になりそうだが、いずれはバリバリと夜勤にも入るつもりだとか。
働く女性へのサポート体制を調べることは、その会社の“ホワイト度”を図る1つの目安になりそうだ。