厚生労働省は11月6日、社会保障審議会介護給付費分科会(分科会長=田辺国昭・国立社会保障・人口問題研究所所長)を開催した。この日は居宅介護支援をテーマに取り上げ、同省が具体案を示し、検討を行った。
基本報酬の逓減制が適用されるケアマネジャー1人当たりの取扱い件数を「40件以上」から「45件以上」へ緩和する案が示された。
前回改定では、ICT活用や事務職員の配置を要件として45件からの適用としたが、今回の厚労省案は要件を設けない一律の緩和となる。
さらに、事務職員の配置に加え、今年4月から稼働しているケアプランデータ連携システムを活用している場合、逓減制性適用を「50件以上」にさらに緩和することを提案。
また、現行では2分の1としている要支援者の取扱い件数についても「3分の1」へ緩和する案も提示している。これらの緩和に合わせて、「ケアマネ1人35件」の標準担当件数を以下のように見直す案も示されている。
要介護者の数に要支援者の数に1/3を乗じた数を加えた数が44又はその端数を増すごとに1とする
要介護者の数に要支援者の数に1/3を乗じた数を加えた数が49又はその端数を増すごとに1とする
通常の新(Ⅰ)か、事務職配置+ケアプランデータ連携システム利用を要件とする新(Ⅱ)かのどちらを算定するかで分ける提案をした。標準担当件数と報酬請求上の持ち件数の整合性を図る考えだ。
訪問介護などに設けられている「同一建物減算」の考え方について、居宅介護支援にも導入することが提案された。
具体的には、「居宅介護支援においても、利用者が居宅介護支援事業所と併設・隣接しているサービス付き高齢者向け住宅等に入居している場合や、複数の利用者が同一の建物に入居している場合には、ケアマネジャーの業務実態を踏まえた評価を検討してはどうか」とした。
居宅介護支援への同一建物減算については、財務省の財政制度等審議会が導入を主張してきた。
厚労省によると、住宅型有料老人ホーム、サ高住(特定施設以外)のうち3割程度が居宅介護支援事業所と併設・隣接。
平均で6割の入居者(介護保険サービス利用者に限る)のケアプランを作成している。
利用者1人当たりの月間労働投入時間(報酬請求など間接業務除く)をみると、サ高住等に入居している利用者は82.7分だったのに対し、入居していない利用者は112.6分と差があると説明した(グラフ)。
同一事業者による提供割合などについて、利用者への説明義務を努力義務に改める提案がなされた。
前回改定で、前6カ月間のケアプランにおける訪問介護、通所介護、地域密着型通所介護、福祉用具貸与の①各サービスの利用割合②サービスごとの同一事業者による提供割合――の2点について、居宅介護支援事業所から利用者へ説明することが義務化された。
以前から、「利用割合が高い事業所を選び、かえって特定の事業所の選択を助長するケースもある」などの声があがっており、厚労省は今回「公正中立性の確保への効果が薄い」とし、義務から努力義務への緩和を提案した。
一方で、これらの情報について、介護サービス情報公表制度上では「引き続き、公表を義務としてはどうか」とした。
「2月に1回」訪問など要件
モニタリングについては、月1回(介護予防支援は3月に1回)以上の訪問を原則としつつ、一定の要件を設けた上で、テレビ電話などを活用したモニタリングを認めることも提案された。
具体的な要件案には①利用者の同意を得る②サービス担当者会議などで、主治医、サービス事業者などから「利用者の状態が安定していること(主治医の所見等も踏まえ、頻繁なプラン変更が想定されない等)」「利用者がテレビ電話装置等を介して意思表示できること(家族のサポートがある場合も含む)」「テレビ電話装置等を活用したモニタリングでは収集できない情報については、他のサービス事業者との連携により情報を収集すること(情報連携シート等の一定の様式を用いた情報連携の仕組みを想定)」について合意が得られている③最低2月に1回(介護予防支援は6月に1回)は利用者の居宅を訪問する――の3点を挙げた。
情報提供の手間を基本報酬で評価
すでに成立した改正介護保険法で、来年度から地域包括支援センター以外に、居宅介護支援事業者も市町村の指定を受けて介護予防支援を実施できるようになる。
これを受けて、居宅介護支援事業所が現在の体制を維持したまま円滑に指定を受けられることを前提に、運営基準については「管理者を主任ケアマネジャーとし、ケアマネジャーのみの配置で事業を実施できるようにすることとしてはどうか」と提案した。
居宅介護支援事業所が指定を受けて行う場合の報酬について、「市町村長に対し、介護予防サービス計画の実施状況などに関して情報提供することを運営基準上、義務づけるとともに、これに伴う手間・コストを基本報酬上で評価してはどうか」とした。
以前から、「介護予防支援の報酬が引き上げられなければ、法改正がされても、指定に手を上げる居宅介護支援事業所は限定されるのではないか」との懸念が寄せられており、報酬の設定が注目されている。
4日以上7日以内は算定不可に
より「医療」の視点を含めたケアマネジメントを推進していくため、厚労省から①入院時情報連携加算の算定を「入院当日中または入院後3日以内に情報提供した場合」に厳格化②通院時情報連携加算について、利用者が「歯科医師」の診察を受ける際に同席した場合も対象に加える③ターミナルケアマネジメント加算について、人生の最終段階における利用者の意向を適切に把握することを要件とした上で、対象疾患を限定しないようにする(現行は末期がんに限定)。あわせて特定事業所医療介護連携加算におけるターミナルケアマネジメント加算の算定回数の要件についても見直しの提案がされた。
①の入院時情報連携加算の要件については現行、「入院後3日以内または7日以内に病院等の職員に対して利用者の情報を提供した場合」に評価している。
「入院当日または3日以内」へ厳格化するのにあわせて「入院時情報提供書」の様式例の見直しも検討してはどうかとしている。
介護予防支援提供で兼務可に
特定事業所加算の要件のうち、常勤専従の主任ケアマネジャー、ケアマネジャーの配置について、事業所が介護予防支援の提供や地域包括支援センターの委託を受けて総合相談支援事業を行う場合には、これらの事業に従事することができるよう、「兼務を認めることとしてはどうか」との案を提示した。
<シルバー産業新聞 2023年11月10日号>
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