2015年12月から、従業員50人以上のすべての事業者に、年1回、従業員の「ストレスチェック」が義務づけられたのはご存じですか?(*) これは、うつ病などの心の病気(精神疾患)を抱えて休職する人、労災申請する人が増えていることが背景にあります。
「ストレスチェック」で自分のストレス度を把握する
心の病気で労災認定された人は、次のような原因で病気になったことが厚生労働省の調査結果で明らかになっています。
●悲惨な事故や災害の体験・目撃
●嫌がらせ、いじめ、暴行を受けた
●月80時間以上の時間外労働を行った
●セクハラを受けた
●上司とのトラブルがあった
そこで、このストレスチェックは、主に以下の2つの目的で実施されることになりました。
●従業員自身がストレスを感じていることに気づくこと
●ストレスを高める職場環境を改善すること
「ストレスチェック」は、ストレス度の高い人を探し出すことが目的なのではありません。ストレスを感じている自分、ストレスを高める職場環境に気づき、それを改善していくこと。そして、ストレスから心の病気にならないよう未然に防ぐことが「ストレスチェック」の目的なのです。
ストレス度は高いが、やりがいも大きい対人援助の仕事
介護職にストレスについて聞くと、よく「間違いなくストレス度が高い」という答えが返ってきます。確かに、一般に対人援助職は強いストレスを感じているといわれます。人間相手の仕事ですから思い通りにならないことが多く、ストレスを感じる場面は多そうです。しかし、同時にやりがいも高いといわれるのがこの仕事。人からお礼を言われたり、笑顔をもらえたり、心に響く“報酬”を直接得られることが多いからです。
そのため、利用者支援そのものによってストレス度が高まることは、実はそれほど多くないと聞きます。それより、ストレス度を高めているのは、同僚や上司など職場の人間関係や、記録の作成など利用者支援以外の仕事だとか。自分がどの程度ストレスを感じているのか。自分が何からストレスを受けることが多いのか。それを自分で把握して、対処方法を考えていくことが大切です。
ストレス度が高いから心の病気になる、とは限らない
「ストレス度が高い」→「心の病気になる」という単純なものではありません。そもそもストレスには、“いいストレス”と“悪いストレス”があるといわれています。少し高めの目標を設定し、その目標に向かって努力するのは、“いいストレス”を受けながら前に進んでいるといえます。しかし、高すぎる目標を他者から設定され、それを何が何でも達成するよう求められたら、それは“悪いストレス”になりかねません。
たとえ強いストレスを受け、ストレス度が高まっても、それを肯定的に受け止めて対応できるのであれば、心の病気にはなりにくいはず。「ストレスチェック」をきっかけに、一度、「ストレス」と心の健康について考えてみるといいのではないでしょうか。
※会社の規模の関係で、「ストレスチェック」の実施予定がない人は、下記のサイトから5分程度でストレスのセルフチェックができます。ぜひ一度試してみてください。
▼「5分でできる職場のストレスセルフチェック」<厚生労働省>
<文:宮下公美子 (社会福祉士・介護福祉ライター)>
*社員の心の健康守れ ストレスチェック来月義務化 大和証券、研修を給与に反映 コニカミノルタ、年2回調査 (2015年11月22日 日本経済新聞)