介護施設で働いている方の中には、「高齢者と関わる仕事にやりがいはあるけれど現場での業務は身体的につらい」と悩んでいる方も多くいます。
このような悩みを抱えている方は、「支援相談員」として勤めるのも一つの道かもしれません。
支援相談員は通常の介護職員と違い、デスクワークがメインとなる業種です。そのため、「介護業界では働きたいけど、現場で働くのはもう難しいかもしれない」と考えている方にはおすすめの職種です。
本記事では、そんな支援相談員の仕事内容や、支援相談員になるための方法などを詳しく解説します。ぜひ参考にして、今後のキャリアプランを考えてみてください。
介護分野には、「〇〇相談員」という名称の職種がたくさんあります。
支援相談員も、その数ある相談員の1つです。
支援相談員は、介護老人保健施設(老健)に在籍し、入所者本人や家族からの相談を受ける窓口となる職員のことを指します。
施設内部だけでなく、入所者のご家族や自治体の担当者などとも連携をとりながら必要な支援をしていくのも支援相談員の重要な役割です。
介護老人保健施設では、入所者数100人の定員に対して最低1人の常勤相談員を配置することが義務付けられています。
支援相談員は普段どのような仕事をしているのでしょうか。ここでは、支援相談員の仕事内容を紹介します。
①入所者本人や家族の日常的な相談・援助
サービスの利用開始・停止の案内、どのようなサービスが利用できるかの提案や見直し、家族からの費用に関する相談など
②入所・退所に関する調整
日程調整、入所を検討している方への案内、3カ月に1回行われる退所・継続入所の判定への立ち合いなど
③他職種・他機関との連携
自治体の担当者・ケアマネジャーとの連絡や打ち合わせ、個別援助計画・ケアプラン作成のサポートなど
④クレーム対応
施設に寄せられたクレームに対する返答、利用者・家族との話し合いなど
⑤介護スタッフ応援
介護スタッフ不足の際には簡単な応援業務、サポート業務など
介護老人保健施設(老健)とは高齢者施設の1つであり、要介護1から要介護5の認定を受けていて、介護やリハビリテーションを必要としている高齢者の中でも、病状が安定している方(入院・治療の必要がない)が利用できる施設のことです。
自宅へ帰り、生活するための機能回復を目的としており、食事・排泄・入浴などの日常生活の介護、通院同行、リハビリテーションなどのサービスが受けられます。
施設の中では介護やリハビリテーションのケアはもとより、介護保険で受けられる支援などを相談・提案し、「どうしたら自宅へ帰ることができるのか」を考えていきます。
先述したとおり、在宅復帰を目標にしているため、無期限に入所できるわけではなく、3か月ごとに退所・入所継続の判定を行います。
支援相談員と似たような仕事に、生活相談員やケアマネジャーなどがあります。
これらの職種は混同されがちですが、それぞれに違いがあります。
ここでは、生活相談員やケアマネジャーとの違いについて説明していきます。
◆生活相談員との違い
介護老人保健施設(老健)で働く相談員が「支援相談員」で、その他の介護施設で働くのが「生活相談員」と呼ばれます。
名称の違いはありますが、業務に大きな違いはありません。
支援相談員も生活相談員も、同様に相談援助を行う仕事を担っています。
◆ケアマネジャー(介護支援専門員)との違い
支援相談員もケアマネジャーも、介護が必要な方へ支援・サポート・提案を行うという点では似ていますが、ケアマネジャーは介護支援専門実務研修受講試験に合格することが必須となっている点で異なります。
また、ケアマネジャーはケアプランを作成するのが主な仕事となります。いわば「サービス事業者と入所者の橋渡し」をする役割を担っています。
一方、支援相談員はより幅広く入所者からの相談を受け、多岐にわたって活動します。
しかし、ケアプランの作成はできず、情報提供などを行うことでケアプラン作成の補佐をしています。
通常、支援相談員になるためには、社会福祉士・精神保健福祉士・社会福祉主事任用資格のうち、いずれかの資格を保有していることが資格要件となっています。
ただし、相談業務を行うだけのスキルを有していると都道府県に認められた場合には、介護業務歴や介護福祉士資格などの保有を条件に、支援相談員の業務につくことが認められるケースもあります。
相談員として働くために必要な資格要件として、基本的に「社会福祉士」「精神保健福祉士」「社会福祉主事任用資格」のうち、いずれかの資格を保有している必要があります。
生活相談員として働く人への調査によると、現在持っていると回答した資格は、「社会福祉士」が9.9%、「精神保健福祉士」が1.1%という結果になっています。(公益財団法人 介護労働安定センター「令和元年度 介護労働実態調査結果」より)
このことから、相談員になるために必要とされている資格を持っている人の割合の方が少ないということがわかります。
それでは、資格なしの状態から支援相談員になるためには、どうすればよいのでしょうか。
前述したとおり、支援相談員になるためには基本的に「社会福祉士」「精神保健福祉士」「社会福祉主事任用資格」のうち、いずれかの資格を保有している必要があります。
ただし、これらの資格を保有していない場合であっても、自治体によって定められた条件を満たしていれば、支援相談員として就労することが認められています。
たとえば東京都であれば、1年間以上の介護計画作成経験があれば無資格でも相談員として働くことができます。
また、長野県では上記資格のほかに、介護福祉士や介護支援相談員の資格があれば相談業務ができると認められています。
それでは、実際に無資格の方が相談員として働く方法を解説します。
①まずは自治体の資格要件をチェック(無資格で満たせそうな場合にはクリア)
②介護福祉士の資格や、介護職経験年数で満たせる場合には指定年数就労する
介護福祉士になるための受験資格は、「介護の実務経験を3年以上有すること」となっています。介護福祉士を目指すには、まず3年間介護現場で働きましょう。
稀に介護の実務経験だけで相談業務ができる自治体もあるので、自治体の資格要件に従いましょう。
③資格要件が必要な場合は社会福祉士を目指す
支援相談員になるために必ず資格が必要である場合、比較的取得を目指しやすい社会福祉士の資格を取得することをおすすめします。
社会福祉士の国家試験を受験するためには様々な手段があります。自分にとって1番近道となるルートを選択するようにしましょう。
実際に公開されている求人情報を見てみると「未経験可」「介護実務経歴不問」としている施設も多いことがわかります。
昨今の高齢化社会に伴い、高齢者施設の増加や入所者の増加が起因となって介護関連の職種は全体的に求人が豊富となっています。
当然資格を持っていれば転職活動が有利に働くので、採用される確率を高めたい場合は資格を取得するのも一つの手です。相談業務の経験がなくても十分転職することが可能なので、ぜひチャレンジしてみてください。
支援相談員の業務の中には、入所者本人・家族との相談業務の他にも、自治体の担当者などと打ち合わせをすることも含まれます。
そのため、一般的には土日祝を定休としている場合が多いです。
日勤のみの勤務で、現在国内で「相談員」として従事している方のうち、70%は常勤雇用となっています。(公益財団法人 介護労働安定センター「令和元年度 介護労働実態調査結果」より)
8:00 申し送り・業務開始
9:00 施設会議
10:00 施設利用の問い合わせへの返答、ケアマネジャーとの打ち合わせ、ケアマネジャーとのプランニング
11:00 サービス担当者会議
14:00 自治体の担当者、地域連携サービス窓口との打ち合わせ
15:00 書類の整理・作成、メールチェック、翌日以降のスケジュールチェック、必要時他職種への連絡
17:30 申し送り、退勤
施設外部へ出向く業務も多く、日によっては分刻みに打ち合わせが入っている場合もあります。
自身の空き時間やスケジュールをしっかり管理する能力も求められます。
支援相談員に転職するとなれば、給与に関しては気になるところですね。
「令和2年度 介護従事者処遇状況等調査結果」によると、相談員の平均給与は月給316,570円となっています。
現在、介護職員初任者研修修了者(ヘルパー2級相当)の平均月給は285,610円となっています。
現場の介護職と比べて、支援相談員の平均給与は高い傾向があります。多くの場合では、介護職員初任者研修修了者として現場で働くよりも年収アップが見込めるのではないでしょうか。
支援相談員のやりがいとしてよく挙げられるものに、「利用者や家族の不安や悩みを解消すること」「人の役に立つ提案ができること」があります。
また、実際に相談された方から感謝の気持ちを伝えられた時に喜びを感じる方も多いようです。
支援相談員は内部・外部からの相談を受ける窓口であり、施設の顔と言っても過言ではありません。
やりがいを感じるポイントは人によってそれぞれ違う場合もありますが、「頼られること」「役に立つこと」「中心になること」「対話すること」にやりがいを感じる方には特におすすめです。
支援相談員は介護業界の中でも、特殊な業務をする部類に分けられます。
ここでは、支援相談員に向いている人の特徴を紹介します。
①自分から積極的にコミュニケーションを取ることができる
入所者本人やご家族、他関係各所との打ち合わせやミーティングなどが多い業種です。
そのため、コミュニケーション能力が必要不可欠となってきます。
中には不安や悩みを「恥ずかしい」「言いにくい」と思っている方もいるため、言葉を引き出すアプローチを行う必要があります。
もちろん自分から発信していくことも支援相談員に必要なスキルですが、他者の話を傾聴したり、寄り添ったりすることができる人に向いている業種です。
②まめな性格
支援相談員は、他施設や自治体担当者、利用者家族とこまめに連絡を取り合い、さまざまなことについて打ち合わせをしていきます。
信頼関係で成り立つ業務でもあるため、細やかな連絡・報告を行うことが大切です。
③フットワークが軽い
打ち合わせなどで支援相談員の方から先方に出向く機会も多くあります。
また、施設案内や入居案内といった営業を行うこともあるため、フットワークの軽さは重要です。
④学習意欲が高い
介護関連の法律は数年ごとに変更される傾向があるため、「常に新しい知識を取り入れたい」という学習意欲の高い方にも向いています。
⑤チームワークを大切にできる
支援相談員は、各々で黙々と作業していくような業務ではありません。
他業種も含めチーム一丸となってひとりの入所者に介入する橋渡し役を担います。そのため、チームワークを大切にできることも必要なスキルです。
支援相談員に適した人の特徴を紹介しましたが、上記すべてを満たしていなければ適性がないというわけではありません。
就労後に大きなギャップが生まれないように参考にしてみてください。
支援相談員を経て、さらにキャリアアップしたいと考えている方もいるのではないでしょうか。支援相談員をゴールとせず、さらなるキャリアアップを目指すことももちろん可能です。
ここでは、支援相談員からのキャリアアップ方法について紹介します。
①支援相談員からケアマネジャーへ
よくあるキャリアアッププランとして、支援相談員からケアマネジャーを目指すパターンがあります。
この場合、支援相談員としてまずは介護老人保健施設で5年間働くことが必要です。
その後ケアマネジャー(介護支援専門員)の資格を取得することで業務の幅が広がり、年収アップも叶います。
②支援相談員から施設管理者へ
支援相談員から施設管理者になるパターンもあります。
実際の求人情報を見てみると、「施設長候補」として支援相談員を募集している場合もあります。
入所者やその家族、他職種など各方面から話を聞く相談員の仕事は施設をまとめる管理者への第一歩になるかもしれません。
支援相談員へ転職する際には、志望動機にどのようなことを書いたらよいのでしょうか。介護業界を志した動機はもちろんですが、少し掘り下げて「なぜ数ある業種の中から支援相談員を選択したのか」を書いていきましょう。
「身体的につらい」「ヘルパー業務では給与が安い」といった理由もあるかもしれませんが、これらを書いてしまうとマイナスな印象を与えてしまう可能性が高いため、避けるようにしましょう。「スキルアップのため」や「進路変更」など、ポジティブなイメージを持たれる内容にするように心がけましょう。
実際の例文を紹介するので、志望動機を書く際にはぜひ参考にしてみてください。
※例文を原文のまま引用するのではなく、自分の経歴や経験、意識・意欲を盛り込んだ志望動機を作成するようにしましょう。
社会福祉士の資格を取得しましたが、別の仕事に就いていました。でも、介護の仕事がしたいという思いを諦めきれず、転職を決意しました。
貴社は複数の施設を運営されているため、他の相談員の方から学ぶ機会や、現場の介護職の方と接する機会も多いと思います。その中で、介護の現場の知識と相談業務のスキルを高めていきたいと思います。
私が介護職を希望する理由は、『自分が目立つのではなく、サポートする「裏方」に徹する』という仕事内容が、私に合うと思ったからです。サポートを必要としている利用者様やそのご家族を支える仕事に魅力を感じていますし、私の性格が活かせる仕事だと思います。
ぜひ貴社で、利用者様やご家族の生活を支える裏方として、お役に立ちたいと思っています。
支援相談員の仕事内容から、実際に支援相談員に転職する方法を解説しました。
支援相談員は大変やりがいのある仕事で、入所者とその家族の人生に大きな影響を与える重要な役割を持っています。
もし支援相談員への転職をお考えの場合は、ぜひこの記事を参考にして支援相談員を目指してみてください。
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