念願の居宅介護支援事業所に異動し、ケアマネジャーとして歩み始めたO・Uさん。以降、2度の異動をしながら14年近く、ケアマネジャーとして同じ法人で働いています。
主任ケアマネジャーの資格も取り、介護業界に大きく貢献するまでになりました。専業主婦だったとは思えない昇進をしたOさんには、どんな仕事観があるのでしょうか。
最終回は、Oさんの仕事に対する思いもお伝えします。
*O・Uさんの「私が転職した理由」…1回目、2回目、3回目、4回目(最終回)はこちら
O・Uさん(56歳)のプロフィール・転職体験
●介護業界歴…20年
●介護の仕事に就く前…メーカー事務職、保険会社集金
●介護業界での転職回数…2回
●いままでの勤務先…訪問入浴事業所、介護老人保健施設、訪問介護事業所、デイケア、居宅介護支援事業所
●保有資格…介護福祉士、ケアマネジャー、主任ケアマネジャー
老健での多職種連携が、今も自分の財産に
居宅介護支援事業所で働き始めた当初は、今のように担当できる利用者さんの人数制限がなかったので、50数件も持っていました。
事業所には車がなく、利用者さん宅を回る足は、自転車。月に一度の訪問のほか、気になる利用者さんのところにこまめに通いたいと思っても、移動するのが大変でした。
最初はひたすら自転車でがんばっていましたが、さすがに限界を感じ、自家用車で訪問するように。
しかし、自家用車では事故などを起こしても補償もないですし、ただ業務に追われ、新しいことを考える余裕のない生活に疲れて……。
同じ法人の介護老人保健施設(老健)への異動を希望しました。
施設ケアマネジャーは、担当する利用者さんが入居者なので、訪問に時間がかからないのがありがたいです。その分、一人ひとりを大事にでき、観察もできるので、プランも立てやすかったですね。
老健の施設長は医師と決まっています。その医師の理念や情熱に、私たちケアマネジャーや介護職は、左右されます。
異動した当初から3年ほどは、とてもきめ細かく、自ら動くタイプの女医が施設長でしたので、非常に恵まれていました。
医師によっては、事務所からほとんど出ずに事務処理だけやっていることもあるようですが、その施設長は時間がある限りフロアに出て、利用者さんたちに接します。
利用者さんたちは施設長が大好きで、とても頼りにしていました。
老健全体が信頼感に包まれ、よい雰囲気でした。そして、その施設長に、本当にいろいろなことを教えてもらいましたね。
また、老健では多職種が連携するので、日々小さなカンファレンスをしているような状態です。
それぞれの専門職の熱い思いを聞き、どう連携すれば利用者さんのためになるのか、深く考えて実行できる点もよかったですね。
管理栄養士には、食事と健康について深く教えてもらいましたし、言語聴覚士には、水の飲み込み方から嚥下を評価するテスト方法なども具体的に指導してもらいました。
リハビリ職には、体幹の保ち方や、骨折後の体の動かし方なども教えてもらい、介護以外で利用者さんの生活を支える方法を、さまざまな視点から学ぶことができました。
それらは、今も、私の財産になっています。
そうした体験をもとに、利用者さんの生活全体に関わり、より健康的な生活を目指して寄り添えるようになったと思います。
新人だった頃にも老健を体験しましたが、当時より利用者さんに対する責任感が強くなり、「なんとしても元気になってもらいたい」という思いも強くなりました。
ただ、3年経つと老健の方針が少しずつ変わり、収益を上げることに固執するようになりました。
管理職は売上を上げることをしいられ、利用者さん一人ひとりに向かい合う時間が減ってしまいました。
尊敬していた施設長も辞めてしまい、介護スタッフや看護師さんたちも次々に異動。そんな中、責任が集中し、自分もつらくなってしまって……。
主任ケアマネジャーの資格を取得しましたが、「ここで生かすのではなく、やはり居宅介護支援事業所で生かしたい」と思うようになりました。
介護業界に20年、専門職としての誇りを持てるように
ほかの法人に転職しようか、どうしようか……。かなり悩みました。
しかし、新しい環境の中、また一から人間関係を築くのは、人見知りの私にとっては、大変なこと。以前働いていた同じ法人の居宅介護支援事業所のほうが、職場環境がわかっているだけに気が楽です。
5年ほど老健で働いた頃、異動願いを出しました。1年かけて後輩に引き継ぎ、後輩の業務がスムーズになることを見届けて、同じ法人内の居宅介護支援事業所にまた舞い戻り、今に至ります。
今は後進の指導や、地域包括支援センターとの連携などが主な仕事ですが、もちろん手が足りなければ利用者さん宅にも伺います。
以前に比べると、介護の仕事を俯瞰して見られるようになると同時に、一人ひとりの利用者さんの細かい部分まで目が届くようになってきたと、自負しています。
気づけば、介護業界に入ってから20年。あっという間でした。
専業主婦から始めたこの仕事に、こんなにのめりこむなんて、当時は思ってもみませんでした。
しかし、利用者さんの健康や生活のしやすさを願い、寄り添うこの仕事は、本当に意味のあるものなのだと、今なら胸を張って言うことができます。
また、自己研鑽のつもりではありましたが、介護福祉士、ケアマネジャー、主任ケアマネジャーと、資格を積み上げられたのも、この仕事に誇りをもって取り組めた理由になっていると思います。
介護職は、利用者さんの食事や入浴、排せつの介助をするだけではありません。幅広い知識と経験をもとに、その方の健康や好み、生活スタイルを大事にし、その方らしく暮らすことを実現する専門職です。
そんな専門職を、少しでも多くの人が目指すよう応援するのも、主任ケアマネジャーの任務だと思い、後輩たちを盛り立てていきたいと考えています。
<三輪 泉(ライター・社会福祉士)>
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