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2024年12月10日

トピックス 訪問介護 廃止理由の4割「ヘルパー不足と高齢化」

トピックス 訪問介護 廃止理由の4割「ヘルパー不足と高齢化」
 訪問介護事業所を廃止する理由として、最も多いのがヘルパーの不足と高齢化だ。108の都道府県、政令市、中核市から回答を得た厚生労働省の調査では、今年3月に廃止した訪問介護376事業所のうち、4割強が「人員不足・高齢化等」を理由に挙げており、「利用者不足・経営不振等」(13.3%)を大きく上回っている(グラフ)。23年度のヘルパーの有効求人倍率は14.14倍。現在従事するヘルパーも4割近くが60代以上となり、訪問介護事業の継続には構造的な課題が横たわる。

グラフ

特定Ⅰ算定事業所が予定外の廃止

 神奈川県内で訪問介護を7事業所運営するユーコープ(當具伸一理事長)では、今年2月に1事業所を廃止。利用者や職員を別事業所に引き継いだ。

 廃止の理由は、サービス提供責任者(以下、サ責)が同じ年に全員退職してしまったこと。同事業所には元々、3人のサ責が在籍し、特定事業所加算も最上位のⅠを算定していた。そのうち、管理者を兼任していたサ責については間もなく定年で退職が決まっていたため、常勤ヘルパーの一人を昇格させることでサ責3人体制が維持されるはずだった。

 しかし、残り2人のサ責が急な転居や体調不良で退職を余儀なくされ、後任候補としていた職員も不安を感じ、サ責への登用を辞退されてしまった。他の事業所から管理者やサ責を異動させる検討も行ったが、どこも人手を回すほどの余裕はなく計画外の廃止に至った。

サ責や管理者候補の不在

 「不測の事態に備え、後任は一人といわずもっと多く育成し、体制を厚くしておくべきということはもちろんわかっている。ただ難しい現状がある」と鈴木忠福祉事業部長は打ち明ける。ユーコープ全体の登録ヘルパーは219人で、10年前と比べて80人近く減少した。さらに、そのうち65歳以上の割合は15年時点で16%だったのに対し、直近では45%を占める。50歳未満はわずか15人。10年前に70歳だった登録ヘルパーの定年は75歳に引き上げた。

 「登録ヘルパー→常勤ヘルパー→サ責→管理者というのが、当法人での基本的なキャリアパス。高齢になるほど、サ責の育成や任用は難しくなる。そもそも高齢のヘルパーは、無理なく自身のペースで働きたい人が大半で、打診してもなかなか受けてはもらえない」と鈴木部長。

「登録ヘルパー前提の報酬体系」

 一方で、「一般的には直行直帰型の登録ヘルパーの割合が一定以上あるから、現行の出来高制や報酬水準の中でも何とか利益をあげられている。これを常勤に切り替えていけば、固定費が上がり、収益はさらに悪化してしまう。登録ヘルパー前提の報酬体系だ」と指摘する。事業継続や体制強化を考えれば、当然、常勤や正職員を増やしたい。だが、事業の収益性を高めるには直行直帰の登録ヘルパーの活躍が欠かせないジレンマを抱える。

 「しかし、最低賃金の伸びとともに、直行直帰であっても人件費率は今後も上昇していくだろう」と鈴木部長。12年時点で849円だった神奈川県内の最低賃金は現在1162円と36%上昇しているが、訪問介護の報酬は処遇改善加算分を含めても12.9~15.3%増と大きな差がある。政府は2020年代に全国平均1500円実現を目標に掲げている。

 そうした中、同法人は事業の持続性を高めるためにも、常勤の割合を高める方針へ切り替えた。「サ責や管理者候補としては40代までが理想だったが、今は50代、60代前半の人にも積極的に声をかけている」という。「訪問介護サービスを維持するために、事業者が積極的に常勤職員や正規職員を確保できる報酬体系や水準が必要だ」と訴える。

表

事業継続のため計画的に統廃合

 愛知県で在宅サービスを中心に展開するコープあいち(森政広理事長)では、10年ほど前から計画的に事業所の統廃合を進めてきた。常務理事の小河原昌二氏は「ヘルパーの不足や高齢化が進む中、規模が小さいままでは運営が危ぶまれる。一定以上の規模とすることで、職員の余裕や働きやすさが生まれる」と統合の理由を説明する。

 豊橋市内にもともと5カ所あった訪問介護サ責7人の体制が整った。天野博幸福祉事業支援部長は「サ責に就いても、まとまった有給休暇を交代で取ることができる。登録ヘルパーも100人在籍し、対応力が高まったおかげで、地域から寄せられる依頼も増えた」とスケールメリットを挙げる。単独での年間売上はおよそ1億7000万円。

 一方で、「規模が大きくなり、人間関係も含めた職場のマネジメントは一段と高いレベルが求められるようになった。今後の課題だ」(天野部長)。

豊橋西の訪問介護事業所

統合した福祉サービス豊橋西の訪問介護事業所

さらなる統廃合で規模拡大を推進

 豊橋での成功を受けて、現在は岡崎市内の統合に着手。そして30年までには名古屋市の統合を目指す。訪問介護事業所については、サ責4人体制を目安に統合を進めていく考えだ。統合に伴い、通所介護の小多機への転換、サ高住やグループホームの併設も視野に入れる。小河原常務は「5年、10年先に事業を継続できているのかという危機感は常にある。地域の介護サービスを守るためにも、統合で基盤をしっかりと固めていきたい」と展望を述べつつ、「生協を母体とし、購買や宅配事業などを展開する法人だからできる取組みでもある。1法人1事業所の介護事業者などはなかなか手立てを見いだせないのではないか」とこぼす。

<シルバー産業新聞 2024年12月10日号>

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