■書名:Go Go! 介護
■著者:津田 かおり
■出版社:産業編集センター
■発行年月:2019年1月
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介護の仕事を10年間続ける著者が描く、マンガで読む介護職のリアル
著者の津田かおりさんは、イラストレーターの仕事をしながら、週2〜3日介護の仕事を続けている人だ。
まったく畑の違う介護の世界に飛び込んで、早10年。
介護の資格取得のためのスクール通いから、特別養護老人ホーム(特養)や訪問介護での仕事など、介護現場で自分が体験したことをマンガで描いたのが本書だ。
本書を開くと、柔らかなタッチのほのぼのとしたイラストにほっとさせられる。
「介護」という決して軽くないテーマにもかかわらず、リラックスした気持ちで気負わずに読み進めることができる。紹介されている体験談も、イラストのイメージのままに、著者自身でもある主人公「ツダさん」の素直でおっとりした人柄に惹かれて読みやすい。
しかし、介護の現実は甘くない。
描かれている内容も、ほのぼのとした話だけではなく、介護の仕事ならではの苦労話も包み隠さず描かれている。
初めて経験する介護の現実に、驚いたり悩んだり、そんな様子がマンガで表現されていく。
たとえば特養では、このような体験について詳しく描かれている。
・初めての排泄介助にあわてる
・先輩スタッフからのキツイ言葉に落ち込む
・男性の利用者さんからのセクハラ的発言にとまどう
・ノロウイルスの院内感染に巻き込まれる
・利用者さんが亡くなってショックを受ける
それぞれの場面で、どのようなことが起こり、どのような気持ちで対処したかが正直に語られていて、介護現場での様子がリアルに伝わってくる。
排泄介助の問題では、マンガでの表現が特に効果的だと感じた。
当時経験したことやその時の思いなどを包み隠さず伝えようとしてくれているが、ひときわ強烈なエピソードについても取り上げることができるのは、ひとえにマンガであったからではないだろうか。
ほのぼのタッチでおもしろおかしく描かれているため、深刻さは前面に出ないものの、体験や思いはしっかりと伝わってくる。
排泄介助といえば、「きつい、汚い」仕事の代表のように考えられがちで、介護の仕事を始める際には不安を感じる人が多い。マンガだから具体的にイメージができ理解が深まり、漠然とした不安も和らぐかもしれない。
さらに、それぞれの辛い経験のあとに、乗り越えた様子がしっかりと描かれていて共感できる。
排泄介助では、「排泄介助は慣れます」と断言。
介護の仕事を始めて1カ月後には、排泄介助の後でも楽しく食事ができるようになったという。
先輩スタッフからのキツイ言葉に涙し、「もう辞めたい」と悩んだときには、時間をかけて自分を成長させることで解決していったそうだ。
本書の根底には、「介護の仕事をしてきて本当に良かった」という著者の思いが感じ取れる。
「私が10年も続けているということが魅力ある証拠なのです」という言葉も頼もしい。
現在、介護職の人には明日への元気を、これから介護職を目指す人には希望を与えてくれる一冊だ。
著者プロフィール(引用)
津田 かおり(つだ・かおり)さん
埼玉県在住。1977年生まれ。イラストレーターなどの仕事をしながら、週2〜3日介護の仕事に携わる。老人ホームの施設で3年働き、そのあと訪問介護を7年続け、現在も継続中。ヘルパー2級と介護福祉士の資格をもつ。著書に『流行のライフスタイルに憧れて』(産業編集センター)がある。