■書名:「こころ」の名医が教える 認知症は接し方で100%変わる!
■著者:吉田 勝明
■出版社:IDP出版
■発行年月:2017年12月
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認知症にどう向き合うか?正しい理解と適切なケアのためのノウハウ集
認知症と聞いて思い浮かぶのはどんなことだろうか?
記憶力が低下する、うつ状態になる、暴力的になる、徘徊する、変なものを食べる、排せつ物を隠したり素手でつかんだりする。
問題行動が多くて、それを注意しても治らず、どう接したらいいのかわからないなど、認知症について知らなければ「できれば関わりたくない」と思ってしまう人も多いかもしれない。
認知症の人とかかわる時に感じる、そのような不安を解消してくれるのが本書だ。
認知症について、その病態と予防法や治療法、認知症の人への接し方をわかりやすく解説してくれる。
著者の吉田さんは、開業以来20余年にわたって認知症を患う人を多く診てきた医師だ。
認知症介護に対する家族の理解、在宅介護での日常生活の過ごし方、認知症の進行を抑える方法を啓発するべきだという思いから本書を執筆したという。
認知症について吉田さんは次のように述べている。
<周囲の人のサポートがあれば、認知症の人も今、このかけがえのない時間を楽しく過ごすことができます。この今を大切にしながら、人間としての尊厳を保ち、楽しく生きて、そして恐れることなく死を迎え、人生を全うすることができるのです。
そういう意味で、認知症は神さまが人生の最後にくれた最高のプレゼントなのです。ただし、認知症の患者さんは一人で生きていくことが難しいので、周囲の人のサポートが欠かせません。
まだ世間には認知症に対する誤解と偏見が少なくありませんが、誰もが認知症の患者さんに対して適切にサポートできるようになり、認知症が「最高のプレゼント」になることを願っています。>
認知症を「最高のプレゼント」と言えるのは、吉田さんの人柄や医師としての使命感、長年の経験によるところが多く、本書を読めば誰でもすぐそのようにポジティブな考えになれるというわけではないだろう。
しかし、認知症を正しく理解し、問題行動と呼ばれるものにも、きちんとした理由があることがわかれば、頭ごなしに叱ったり、行動を制限したりすることはなくなる。
その積み重ねが、やがて認知症に対する偏見や誤解をなくしていくことになるのではないだろうか。
本書に書かれていることは、目新しいことではない。
認知症になると記憶力や空間認識力は衰えるが、古い記憶は残っているし、感情も豊か。
できないことを責めるのではなく、できることを褒めて、人としての尊厳を尊重する。命令したり、急かしたり、子ども扱いしたりはしない。問題行動については、その理由をよく考えることが大切。
このようなことは認知症の理解のためによく言われていることである。
しかし、本書では、要点が箇条書きになっていたり、大切な語句は太字になっていたりと、読みながら理解しやすい作りになっている。
また、認知症の原因や症状別の対処法も丁寧に説明されている。
認知症の人でも、元気でしっかりしていた過去がある。家族は元気な姿や過去を知っているため、できなくなったことばかりに目が行きがちで、なかなか褒めることができない。
しかし、過去を知らない介護・看護スタッフなら、その人の残された能力を褒めることができると、スタッフならではの役割についても触れられている。
そのほかにも、認知症の人が入院時に体験する困難や苦痛についても説明されていて参考になる。
最後の章には、認知症予防運動プログラム『コグニサイズ』もイラスト付きで紹介されており、介護施設でのレクリエーションなどにもすぐ使えそうだ。
手元に置いて気になるところから読むだけでも、その知識が日々の介護の仕事に活かせる便利な実用書となるだろう。
著者プロフィール
吉田 勝明(よしだ・かつあき)さん
1956年、福岡県生まれ。日本老年医学会専門医、精神科専門医。1982年金沢医科大学医学部卒業。1988年東京医科大学大学院卒業。医学博士。1993年横浜相原病院開設、病院長に就任。産業医、学校医、神奈川県教育委員として活躍中。精神保健指定医、日本医師会認定産業医、全日本音楽療法連盟認定音楽療法士。