2017年08月04日

『症状別でわかる認知症のトラブル対処法』 | 「介護求人ナビ　介護転職お役立ち情報」

■書名：症状別でわかる認知症のトラブル対処法
■著者：小板建太、河野和彦（監修）
■出版社：現代書林
■発行年月：2017年2月

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怒る・暴れる、徘徊するなどの周辺症状に注目した認知症の治療法を解説

認知症の治療を受けているにもかかわらず、暴言や暴力が激しくなったり、元気がなくなって寝たきりになったり、症状がどんどん悪化…そんなときに読みたいのが本書だ。

本書は、「コウノメソッド」の普及に長く携わってきた小板建太さんが、その基本をまとめたもの。認知症の人の介護に関わるすべての人に向けて、わかりやすく書かれている。
紹介されている「コウノメソッド」とは、本書監修の河野和彦医師が30年の経験をもとにまとめた、認知症の薬物療法マニュアルだ。認知機能の低下（中核症状）ではなく、怒る・暴れる、徘徊などの「困った症状（周辺症状）」に注目する点が特徴。
そのためには、認知症をタイプと症状に細かく分け、それぞれに合った対応をすることが必要なのだという。認知症のタイプは大きく以下の4つに分けられる。

・アルツハイマー型認知症
・脳血管性認知症
・レビー小体型認知症
・前頭側頭型認知症（ピック病など）

それぞれ違う病気なので、本来は薬の処方も異なる。しかし実際には、タイプの鑑別を誤り、多くはアルツハイマー型認知症と診断され、不適切な薬が処方され続けてしまうことが多いという。

不適切に処方されていることが多い薬はアリセプト。アルツハイマー型認知症には有効な薬だが、レビー小体型認知症やピック病の人が服薬すると、認知症の周辺症状が激しく悪化してしまう。

＜ピックの患者さんは、イライラして暴力・暴言などの症状がエスカレートします。（中略）レビーの患者さんは逆です。レビーの患者さんがアリセプトの服用を続けていると元気がなくなり、食事をとらなくなり、歩けなくなり、意識が低下して、やがて寝たきりになります。＞

そして、こうした人たちの多くが、アリセプトの服用を中止すれば劇的に改善していくそうだ。認知症のタイプを正しく診断することが、いかに大切かがわかる。
本書では、認知症のタイプの見分け方を、第4章「症状から見分ける認知症の種類」で、ていねいに説明。経験が浅い介護職の人でもしっかりと理解できるようになっている。
いつも近くで介護している介護職には、正しく診断するための情報が集まりやすいので、しっかり理解しておきたい。

さらに、第5章「こんなときどうする？　困った症状のコウノメソッド解決法」では、症状別に明確な対処法が示されている。
周辺症状に注目し、「介護者を救う」ことをめざすコウノメソッドならではの、日々の介護にすぐに活かせる内容だ。「とにかく今家族が困っている症状を取るための処方をしよう」と考える現実的な対処法なので、何らかの突破口になるのではないだろうか。

コウノメソッドは、現在の認知症医療の主流派ではない。サプリメントを重視して使うこともあって、主流派から疎まれることもあるそうだ。
しかし、一つの方法で明らかにうまくいかないとき、柔軟にいろいろな考え方に目を向けてみることは大切なこと。その一つとして、コウノメソッドの手法は大いに参考にすべきだろう。

著者プロフィール

小板建太（こいた・けんた）さん
一般社団法人認知症ケアアドバイザー協会代表理事。株式会社ミヤビハウス代表取締役。有料老人ホーム施設長、介護支援専門員として施設入所者や在宅介護者の支援をしている。福祉住環境分野でも建築士として活躍するかたわら住宅改修・福祉用具の講習会を開催し指導に携わる。
コウノメソッドと出会ってからは、重度認知症患者の支援のため精力的に活動。その経験を活かして各地で講演会を開催中。

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