■書名:介護する人のための誤嚥性肺炎 こうすれば防げる!助かる!
■監修:稲川 利光
■発行元:主婦の友社
■発行年月:2013年11月30日
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介護の力で誤嚥性肺炎を防ごう! 現場で役立つノウハウを紹介
平成27年の統計によると、肺炎は日本人の死因の第3位を占める。
肺炎のリスクは高齢者になるとぐんと高まるが、80歳以上の肺炎のほとんどは誤嚥が原因だと言う。
本書は、介護の力で誤嚥性肺炎を防ぐための知識と、具体的なノウハウを紹介した一冊だ。
主な内容は、次の5つのパートで説明される。
Part-1:誤嚥性肺炎はなぜ起こる(嚥下のメカニズム、誤嚥の症状や原因など)
Part-2:誤嚥性肺炎を防ぐ介護とは(予防のポイントとノウハウ)
Part-3:口腔ケアで誤嚥性肺炎を防ぐ(日頃の生活援助のあり方)
Part-4:嚥下機能を高めて誤嚥性肺炎を防ぐ体操(簡単な訓練や体操、マッサージ)
Part-5:誤嚥性肺炎の治療(誤嚥性肺炎になったときの治療と介護の役割)
誤嚥性肺炎の予防は、「高齢者のQOL(生活の質)を維持するための大切なアプローチ」だと著者は言う。
そのためには「生活」に踏み込んだ対策が必要なのだと力説している。
<誤嚥性肺炎は一度かかると、繰り返すことが多いのです。
そのため、おおもとの原因を取り除かなければなりません。
原因の多くは食生活を中心とする「生活」にあります。
これまでと同じような生活をそのまま続けるのではなく、生活を切り替えることが大切です。
よりよい環境をつくることが、介護の重要な役割なのです。>
嚥下障害、誤嚥性肺炎といえば食事や口腔ケアにばかり注目が集まるが、本書ではもう少し視野を広げ、たとえば「正しい坐位」であったり、「口から食べることの意義」にもスポットを当てている。
もちろん、口腔ケアについては、基本からやり方までイラストを交えながら細かく解説。
マヒのある方や、意識障害のある方への口腔ケアについての解説もあり、現場目線で、介護をする人の役に立つ実用書をという著者の意図が感じられる。
現場目線の実用書、という姿勢は本書全体に貫かれている。
たとえば、Part-1のメカニズム解説でも、「こんな症状があったら嚥下障害を疑え」として、「よだれが出る」「口が渇く」などの症状をあげ、チェック方法も提示。
また、誤嚥性肺炎を早期に発見するための「観察ポイント」を紹介するなど、きめ細かな解説はすぐに現場で役立つだろう。
イラストや図表も多く取り入れているので、けっして難しい印象はない。
介護に携わる人なら、嚥下障害や誤嚥性肺炎とは無縁ではいられないはず。
「利用者のQOL」という視点からも、役立つヒントが見つかるのではないだろうか。
<小田>
監修者プロフィール
稲川利光(いながわ・としみつ)さん
医学博士・NTT東日本関東病院リハビリテーション科部長。
九州大学農学部、九州リハビリテーション大学校理学療法科卒業後、福岡医療団千鳥橋病院リハビリテーションセンター勤務。
その後、香川医科大学医学部に入学。
卒業後、国立香川医科大学第二内科、NTT東日本伊豆病院リハビリテーション科を経て、現職に。
「老人ケアの元気ぐすり」、「リハビリの心と力」など著書多数。
日本リハビリテーション医学会専門医、PEGドクターズネットワーク理事、東京医療保健大学臨床教授。