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2016年07月22日

『老後破産 長寿という悪夢』 | 「介護求人ナビ 介護転職お役立ち情報」

book■書名:老後破産 長寿という悪夢
■著者:NHKスペシャル取材班
■発行元:新潮社
■発行年月:2015年7月10日

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NHKスペシャルを書籍化。深刻化する「老後破産」の実態に迫るルポルタージュ

団塊の世代が、75歳以上の後期高齢者に達する「2025年問題」が現実味を帯び、独居高齢者や介護離職の増加などにスポットが当たるようになってきた。人口減少や社会保障のひずみによって生まれる様々な問題が、すでに多くの高齢者やその家族を苦しめている。本書が取りあげている「老後破産」もそのひとつだ。

本書は、2014年9月28日に放送され、大きな反響を呼んだNHKスペシャル『老人漂流社会~“老後破産”の現実~』の取材をベースにしたルポルタージュ。この番組で使われた「老後破産」という造語がタイトルになっている。

日本には、老後を支える年金制度があり、セーフティネットとして生活保護という制度も用意されている。しかしその年金制度は、親子が同居することがあたりまえの時代に作られたもの。現実には一人暮らしの高齢者が増え、年金収入は年々減少している。年金収入だけで暮らすことは難しいのが現状だ。

さらに、年金額が生活保護水準以下の人のうち、実際に生活保護を受けている高齢者は1割ほど。生活保護を受けずに年金だけでギリギリの生活を続けている一人暮らしの高齢者は、全国でざっと200万人余だと言う。しかし、ギリギリのところで持ちこたえていても、病気や要介護などをキッカケに、あっという間に生活が破綻してしまう。その先に待つのは「老後破産」だ。

本書は、「老後破産」に追い込まれていく一人ひとりを丁寧に取材し、その現状と課題をあぶり出していく。

たとえば、生活保護を受ければ、医療費や介護費用が無償になる。しかし、数十万円の預金を「自分の葬儀代に」と大切にとっている人は、預金があるという理由で生活保護が受けられない。「住み慣れた自宅で過ごしたい」という希望も、生活保護を受けるには障壁になる。結局、生活保護をあきらめ、すべてを切り詰めた生活を強いられる。たとえ体の不調があっても我慢し、病院に行くことさえ節約せざるを得ない人たちも多いのだ。

身近な人や、ましてや自分がそうした老後を迎えるとは想像しにくい。しかし、本書を読むとけっして他人事ではないのだと実感する。もともと十分な年金があり、蓄えがあったとしても、たとえば配偶者の死によって独居になったり、病気をしたりというキッカケで誰にでも起こりうることなのだ。

「一生懸命働いてきて、まさか、こんな老後を迎えることになるなんて、思いもしなかった」
「生きていることが辛いんです」……
本書に登場する高齢者がつぶやく言葉は、胸に突き刺さる。

本書では、介護サービスの問題についても言及している。
一人暮らしの高齢者が増え、介護サービスの必要度は以前よりも増えている。しかし、介護サービスを受けたくても受けられない人も多いと言う。経済的に余裕がなく、介護サービスを限界まで我慢して切り詰めている人、介護保険料を滞納していたためにサービス料が「3割負担」に引き上げられ、介護保険を利用できなくなっている人…など。

<入浴の介助、食事作り、洗濯など、支援したいことは山ほどあるのに、それをしてあげられないのが心苦しいと訴える介護ヘルパーは多い。それでも「利用者にお金がないから」という理由で、介護サービスは増やせないのだ。>

その人にとって、介護サービスの充実が必要だとわかっていても、その介護費用の負担そのものが生活を圧迫してしまう悪循環が、現実としてあるのだ。

本書は直接、介護の仕事に結びつく内容ではない。しかし、高齢者が置かれている状況を知ることは、利用者のニーズをより深く理解することにつながるのではないだろうか。また、将来、ケアマネジャーやソーシャルワーカーをめざす人にとっては、どのような支援が必要なのかを考える参考になるだろう。

<「老後破産」に追いつめられ、生きる気力を失ってしまった高齢者を社会がどう支えていくのか。SOSも発さず、じっと耐えている人たちをどう発見し、どう支援につなげていくのか。超高齢社会を迎え、深刻化する事態を前に、私たちひとりひとりの覚悟が問われているのではなかろうか。>

「早く死にたい」ではなく、「生きていて良かった」の言葉を聞くための支援が求められている。

<小田>


執筆者プロフィール

NHKスペシャル取材班執筆者/
鎌田 靖(かまだ・やすし)さん(※「はじめに」と「おわりに」を執筆)

1981年、記者としてNHK入局。神戸放送局デスク、報道局社会部副部長、司法キャップなどを歴任。2005年、解説委員。『週刊こどもニュース』のお父さん役、『追跡!A to Z』キャスター、NHKスペシャル『シリーズ東日本大震災』キャスター。著書に『ワーキングプア 日本を蝕む病』ほか。

板垣淑子(いたがき・よしこ)さん
1994年NHK入局。報道局制作センター、仙台放送局、報道局社会番組部、スペシャル番組センターを経て、現在、大型企画開発センター。主な担当番組は、NHKスペシャル『ワーキングプア~働いても働いても豊かになれない~』ほか多数。ギャラクシー賞や菊池寛賞のほか、2014年には放送文化基金賞個人賞を受賞。

原 拓也(はら・たくや)さん
2004年NHK入局。大阪放送局、首都圏放送センターを経て、報道局社会番組部。主な担当番組に首都圏スペシャル『あなたらしい老後と死は?~無縁社会の中で~』、NHKスペシャル『終の住処はどこに 老人漂流社会』、NHKスペシャル『“助けて”と言えない~孤立する認知症高齢者~』で第51回ギャラクシー賞選奨。

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