●支える足と持つ手は左右クロスの組み合わせで。足首のかたい人は、しゃがむ前の「カカト先足踏み」が効果的です!
こんにちは、身体術研究者の甲野陽紀です。前回からはじまった「カラダの個性」というテーマ。「カラダの動かし方にも個性がある」と聞くと、自分はどんなタイプかな、と気になるのではないでしょうか。さっそく、一緒に研究してみましょう!
準備姿勢から見えてくることは?
カラダの個性は、しゃがむ姿勢ひとつにもよく表れる
kaoriさんの場合は、足を前後にし、カカトをやや上げた姿勢で準備に入るのが特徴ですね。
――女性に多い姿勢かもしれませんね。
そうですね。人それぞれクセがありますから、良し悪しではないのですが、足を前後させる姿勢でしゃがむと、どうしても、前に出した足で支え、同じ側の手でもちあげをリードすることになりがちです。そうすると、カラダの左右の連携が崩れて不安定になってしまうことがあるんです。できるなら、
足と手は左と右、あるいは右と左、というようにクロスの関係で動いていきたいですね。
――左右両方のカラダを使うことで、安定してくるわけですね。では、タネエディターの場合はどうでしょう?
上体で座布団を取りにいっているように見えるのは、
足首が上手に使えていないからなんです。足首のかたい人によく見られる姿勢ですね。そのぶんを膝や鼠蹊(そけい)部(足の付け根部分)の動きでカバーしているわけですが、上体に無理がかかっているので、やはり腕や肩には負担がかかる姿勢だと思います。
もちあげ姿勢から見えてくることは?
kaoriさんの場合は、途中でヒジから持ち上げようとする動作が出てきます。
ヒジを支点にしてもちあげる動作では、どうしても肩にも力がはいるので、肩もあがっているように見えます。簡単にいえば、カラダに余計な力がはいる持ち上げ方、ということです。
――これも準備姿勢の不安定さが影響しているのでしょうか?
そうだと思います。動きは連動しますから、始動が不安定だと、安定させようと腕を固めることになり、腕を固めると足も固まりやすくなって、持ち上げの動作を上体だけに頼ることになりがちです。
――始動の姿勢から安定させて、ということですね。では、タネエディターの場合は?
手首のゆるさが少し気になりますね。
手首がゆるいというのは、カラダ全体のつながり感が弱いということです。ですから、座布団をもつ指先もちょっと引っ掛けているような感じになっています。カラダ全体のつながりが弱いと、上体で無理にもちあげることになってしまい、それが習慣になるとカラダを痛めてしまうことにもなりますから、手首が活きているかどうかは、ぜひチェックしてもらいたいポイントです。
改善点は?
kaoriさんの場合は、足を前後させる準備姿勢ですから、前に出した足と反対側の手でもちあげをリードするつもりで試してみるといいですね。左足を前に出すなら、右手でもちあげる感覚ですね。左手は補助する感じでいいと思いますから。そのとき、
ヒシ先をとらえながら動くとよりいっそう安定感が出てくると思います。
タネエディターの場合は、足首をまずほぐしてあげたいですね。それには、カカト先からの足踏みが効果的です。しゃがみ込む前に、
ポンポンとカカトから足踏みをすると、足首の曲がる角度がかなり変わってくるはずです。持ち上げ動作にはいるときは、カラダ全体のつながり感を大事にすること。指先から動いて座布団を手の内でとりにいくと、手首、ヒジ、肩、上体までが柔らかくつながる感じがでてきます。 手首が緩むのは、カラダに力がはいるのはいけないからと、意識してリラックスしようとしているからかもしれませんね。カラダをどうこうしようと考えず、
指先から動いて、手を活かす持ち方をすれば、自然にカラダはつながってきますよ。
支える足とリードする持ち手は左右反対の組み合わせで!足を前後させてしゃがむ姿勢の場合、前に出した足と反対側の手で持つ動作をリードするとカラダが安定する。これは、しゃがむ姿勢に限らない。「手と足は左右反対の組み合わせが安定する」と覚えておくとよい。持ち上げ動作のときはヒジから持ち上げようとすると苦しくなるので、いつものように、まずは指先から動くことを心がけよう!
“足首硬派”の人は、しゃがむ前にカカト先からの足踏みを!足首が深く前傾しない人は、腰から上の上体に頼りがち。ヒジや肩、腰に負担がかかっていることは写真からも推測できる。このタイプの人におすすめは、しゃがむ前にカカト先からの足踏み。ポンポンとほんの一、二回で、ずいぶん楽になるはず。持ちあげ動作のときには、指先から動いて手の内で持つ感覚にすると、カラダ全体のつながりを活かすことができる
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どうだったでしょうか? 自分にもそんな傾向があるなあ、と感じた点があれば、ぜひセルフチェックしてみてください。このテーマ、次回も続きます!
◆ Profile ◆
甲野陽紀(こうの•はるのり)
身体技法研究家。東京•多摩市生まれ。高校卒業後、「古武術介護」の提案者としても知られる武術研究家の父、甲野善紀氏の補佐役として各地の講習会などに同行する中で、ささいな動きの違いから感覚がさまざまに変わっていくカラダの不思議さ、奥深さを改めて実感し、特定の方法やジャンルによらない独自の視点からの身体技法の研究を始める。見る、触れる、曲げる、といった、わたしたちが日々、何気なく行っている動作からカラダを見つめ直すことで新しい感覚が生まれていく“発見の体験”は、多くの方の共感を呼び、全国各地の講習会、講演会などで活躍中。スポーツや武術、音楽、医療、介護、運動嫌いの方のための身体講座まで、講座のテーマは幅広く開かれており、ファン層も多彩。都内では、朝日カルチャーセンター新宿•湘南、よみうりカルチャー自由が丘などで定期的に講習会を開催している。日々のくわしい活動はオフィシャルウエブサイトへ。
http://hkhp.p2.bindsite.jp/index.html