転職は自分の人生にとっても大きな決断の一つ。
転職を決意したのであれば、1社よりも複数の選択肢があった方がより自分に合った会社を選定することができます。
今回は、転職活動において複数社応募することのメリットや注意点などを、実際の転職経験者アンケートからリサーチします! ぜひ転職活動の参考にしてみてください。
介護士の転職活動、平均応募社数は?
介護士から介護士への1回の転職活動における応募社数などのデータについて紹介します。
「1社のみ応募」が約●%
厚生労働省の「一般職業紹介状況(令和2年11月分)について」によると、介護保険サービス職員の有効求人倍率は3.88倍で、
1人の求職者に対し4社近くの会社が競合するという結果となっています。
このように、介護業界は慢性的な人手不足が特に深刻な業界であることから、特に経験者においては1社目の応募で決まってしまうことが多いです。
介護求人ナビが実施した介護士へのアンケート調査によると、正社員や契約社員では
「1社のみの応募」が半数を超えています。また、パートやアルバイトでは
「1社のみの応募」が60%を超えており、1社のみの傾向が高くなっています。
次に多いのは「2社の応募」で、全体の4分の1を占めます。
年齢の傾向としては20歳から24歳までの若い世代が1社のみの応募の傾向が高く、60%が「1社のみ応募」という結果でした。
若い人材には長く勤められることが期待されているだけでなく、体力もあるので重要な労働力として評価されています。介護業界において若い人材は非常に重宝されるため、1社のみで採用が決まることが多いのでしょう。
応募者数は職種によって差はある?
介護業界の主な職種である介護士、ケアマネジャー、管理者、相談員、サービス提供責任者、看護師、リハビリ・機能訓練職は、1社のみの応募が半数を超えており、とりわけサービス提供責任者やリハビリ・機能訓練職で70%以上、看護職で60%以上が1社のみの応募となっています。
ただ、
管理者や
ケアマネジャーといった責任の程度の高い職種や特に経験が必要とされる職種では、
2社以上の応募も30%を超えています。
転職活動で同時に複数の求人に応募できる?
転職活動では、複数の求人へ応募する「複数応募」は珍しいことではありません。複数応募した人の約66%が、
「転職先を早く決めたいから複数応募した」と答えています。
会社側が複数の会社へ応募することを制限することはありません。
特に決まりはないため、自分の転職活動の環境を考慮して1度に複数応募するやり方でも、1社ずつ応募するやり方のどちらでも問題はありません。
最初は一斉に複数社応募をしたとしても、面接が集中しすぎてうまくいかなかったので1社ずつに切り替えるなど、転職活動の進め方を自由に変更することも可能です。
ただ、面接時に採用担当者から複数社応募しているかどうかを聞かれることがあるので、聞かれた際は正直に答えるようにしましょう。
その際に、1社は介護業界でもう1社は飲食店、さらにマスコミ業界も受けているなど、活動に一貫性がないとマイナスの評価となるので
会社選びの軸はぶれないように注意するとよいでしょう。
転職活動で複数応募するメリット6つ
それでは、転職活動において複数応募するメリットはどういったところになるのでしょうか。ここでは、複数応募のメリットについて紹介します。
(1)事業所を比較することができる
転職活動によって自分の理想とする会社に就職するためには、複数の会社を比較検討することが重要です。
それぞれの会社の特徴や企業風土、就業条件、給料などを比較することで各社を分析できます。
その分析によって自分の希望に合った会社を見つけ出すことができるでしょう。
⇒給与、待遇、企業メッセージで求人を比べてみる
(2)面接や履歴書作成の機会が増えることにより転職活動のスキルが上がる
複数の応募ということは
チャンスも複数回あるということになります。たとえば1社目の面接で失敗してしまっても、その失敗を次の面接に活かすことができます。
面接の機会が増えることにより、面接の基礎だけでなく応用力も身につき、
採用担当者からの質問に対して自分の考えや思っていることをしっかりと伝えることができるようになります。
履歴書の作成においても、複数社応募することによって改良を加えることができます。
面接の経験を重ねていくことや履歴書の改良を加えることで、転職活動に慣れ、スムーズに転職へとつなげることが可能となります。
⇒履歴書の書き方やコツはこちら
⇒面接対策・ノウハウはこちら
(3)知らなかった良い事業所に出会える
複数の応募をするということはそれだけ多くの会社に出会えるということになります。たとえ第1希望の会社でない会社を選んだとしても、意外としっくりくることもあります。
特に介護業界はどこも人手不足が深刻な状態なので、会社側は応募者に対し、精一杯自分の会社の良さをプレゼンしてくることが多いでしょう。
その中で、パンフレットやホームページからは見出せなかった
新しい魅力を発見する場合もあります。
(4)転職活動が短期間に終わる
転職活動においては、応募する会社が多ければ多いほど内定が出る確率は高くなります。
そのため、複数の会社に応募をしておくと転職活動が短期間に終わる可能性が高まるため、
気持ちに余裕を持って転職活動に臨ことができるようになります。
一方、1社のみだとその1社が不採用になってしまった場合、次の応募先を探し始めることになるのでかなりのタイムロスが発生してしまいます。
⇒「介護業界の転職は、どれぐらいの期間がかかる?」
(5)複数の内定が交渉を優位に進めることもある
実際に採用担当の面接をしているときに、応募者側から条件を提示されることがあります。
たとえば「御社が第一希望で企業理念や事業所の雰囲気に非常に感銘を受けたのですが、どうしても給与面において他社で内定をいただいている条件よりも見劣りをしてしまいます。一生懸命、御社のために働きたいので、給与面についてのご検討をしていただけませんでしょうか」といったように、複数内定を得ているからこその条件交渉が可能になります。
同業他社との比較による条件の提示は、ただただ漠然とした給与アップの交渉よりも明確な根拠があるため、会社側としてはどうしても採用したい人材であれば応募者からの条件提示を検討し対応する場合があります。
⇒「他社と比較した待遇の良さを志望動機に書いても大丈夫?<履歴書Q&A>」
(6)自分の経験や技術に自信がない場合でも採用してくれる会社に出会える可能性がある
介護業界は未経験からの転職者も多くいることから、研修制度が充実している会社が多くあります。
たとえ経験が浅く、技術にまだ自信がない場合でも、将来性や応募者の人間性などが評価され、採用してくれる会社に出会えることがあります。
そのため、自分の経験や技術に自信がないときは、応募する会社の数を増やして対応するとよいでしょう。
こんな場合の複数応募は注意しましょう
複数応募のメリットを紹介してきましたが、実は複数応募には向かないパターンもあります。
以下のような場合は、複数応募することをよく考えた方がいいでしょう。
(1)現在、勤めている会社が忙しすぎる
介護業界はどこも慢性的な人手不足の状態のため、忙しい介護職員の方は多くいます。
特に面接は平日の日中に行われることが多く、あらかじめ勤務表が作成されていると急遽休むことが困難です。
たとえ勤務表が作成されていなくとも、休暇取得の希望が通りにくい場合は複数応募するのは難しいでしょう。
このように、転職活動に時間を確保することが難しい場合は、
無理して複数応募することでスケジュールすら調整できず断念することがありうるため注意が必要です。
(2)希望する条件が多い場合
転職活動において、希望する条件が多ければ多いほど、その条件に一致する会社の数はどんどん少なくなります。
希望する条件と一致する会社が少ない場合は、
1社にかける企業研究の時間をしっかりと確保する方がよいでしょう。
採用担当者は自社に対する関心や理解度がどのくらいあるのかということを採用の基準とすることがあるので、企業研究が不十分であるとマイナス要因となってしまいます。
また、志望動機についても注意が必要です。
介護業界ならどこでも当てはまるような志望動機だと、「入社したい」という意欲が採用担当者へ伝わりづらいです。
希望する条件が多く、条件を満たす会社が少ない場合は特に入念な準備が必要なので複数応募については注意してください。
複数応募の注意点1「本命より先に内定が…」
複数応募に際して多くの方が気になっているのが、
本命よりも先に別の会社で内定をもらってしまったときの対応ではないでしょうか。
Q.応募した別の会社の面接前に内定が出てしまったらどうしたらよいでしょうか。
内定の回答期限内に第一希望の会社から内定が出れば問題ありませんが、第一希望の会社から内定が出る前に別の会社の内定回答期限が来てしまったときは、
内定の保留や期限の延長をお願いしましょう。
⇒「転職で内定保留はできる?「他社の面接結果待ち」での上手な連絡方法<内定・退職Q&A>」
複数応募で大切なのは、
面接の結果が出るタイミングを調整することです。
特に介護業界は現場の人手不足解消のために、採用するにふさわしい人材であればすぐにでも働いてほしいため、
内定までの期間は面接日から1週間以内と大変短いところが多いです。
そのため、複数応募している場合は面接から内定までの期間について、応募要項や面接などでしっかりと確認しておくとよいでしょう。
複数応募の注意点2「面接で聞かれたら」
転職活動の面接では採用担当者から複数応募や他社の選考状況について直接聞かれることがあります。
Q.面接で複数応募しているかを聞かれたらどう答えたらよいでしょうか。
正直に答えて構いません。ただ、面接している会社がたとえ第一希望の会社でなくとも、その会社への入社を希望しているということをしっかりとアピールしましょう。
応募者が複数の会社へ応募している可能性があることは採用担当者も理解して質問をしています。
理由は、採用面接には多くの方が応募に来ますが、採用人数には限りがあるため、複数応募者の採用にあたっては「本当に自社に入社する意思があるのか」を採用担当者は確認をしなければならないからです。
また、この質問は応募者の自社に対する関心や理解度、本気度もみています。
その本気度を図るポイントが
志望動機となります。
「
なぜ他の事業者ではなく、この事業者を第一希望に選んだのか」という点に説得力がなければいけません。
その答えが明確になっていないのであれば、志望動機について考え直すようにしましょう。
⇒「面接で、複数応募していることを正直に言ったらダメ?」
まとめ
複数社に応募する場合、面接や内定のタイミングに注意して転職活動を行えば、多くのメリットを受けることができます。
もちろん第一希望となる会社に就職することが最も理想的なのですが、多くの会社を比較することにより第一希望が変わることもあり、
面接や会社見学等を通じてより魅力的な会社に出会えるかもしれません。
応募の段階で躊躇することはせず、積極的にチャレンジしてよりよい転職へと結びつけていきましょう。
【調査について】
アンケートサイト「マクロミル」モニターへのWeb調査
調査対象:以下の4つの条件にすべてあてはまる人
・現在、介護福祉業界で勤務中
・転職の経験がある
・過去に求人サイトを閲覧した経験がある
・北海道、埼玉県、千葉県、東京都、神奈川県、愛知県、京都府、大阪府、兵庫県、広島県、福岡県のいずれかに居住
調査時期:2020年3月23日~3月24日
調査人数:1,030人