建設業界から介護職に転職したTさん(45歳男性)の転職体験談。
楽しい時間を共有するデイサービスでの仕事に物足りなさを感じ、「困っている人の生活を支えたい」と考えて転職先に選んだ、認知症支援・訪問介護の事業所とは?
◆病院(介護職)・デイサービス(介護職)→訪問介護事業所(サービス提供責任者)
T・Mさん(男性・45歳)
●病院(介護職)(勤務期間:2年/月収約12万円)
●デイサービス(介護職)(勤務期間:6年/月収約15万円)
●訪問介護事業所(サービス提供責任者)(勤務期間:2年/月収約24万円+ボーナス3カ月分程度)
保有資格:介護福祉士、介護支援専門員、認定介護支援専門員
家族構成:本人、妻、長男7歳、長女4歳
*T・Mさんの「転職体験談」
第1回:
建設から介護業界へ異業種転職!本当に楽しい仕事って?〜転職体験Tさん1
第2回:
病院での仕事が辛くてデイサービスに異動。その人らしさを活かせる楽しい介護~転職体験Tさん2
【転職への思い】自分の仕事は、自己満足の仕事?!
デイサービスで生活相談員をするようになり、社内的にもある程度認められ、順調に仕事は進んでいきました。
しかし、あと3年、5年と同じ仕事をするのかと思うと、疑問がわいてきたんです。
介護の未来はどうなっているのだろう。
10年後も今と同じ介護でよいのだろうか。
デイサービスで「自分のやりたい介護が実現できている」というだけで満足していてはいけない、と考えるようになりました。
今後は、認知症の利用者さんの居場所も、GPSで探すことができるようになるでしょう。徘徊センターなどいらなくなるかもしれません。
AIを使った介護が人間以上に優れていることがわかったら、我々介護職はいったい何をすればいいのか。
介護の本質を見極め、今後、どんなサービスを提供したらいいのか、今から真剣に考えないといけないのだ、という気持ちがどんどん高まってきました。
もっと勉強しなければ、という切実な思いを募らせ、さまざまな研修会に顔を出しました。
意欲的に利用者さんの生活を支える、生活を共にしている先輩たちに会い、刺激を受けると、やはりアクティビティ中心のデイサービスではなく、利用者さんの生活を支える役割を果たしたいと思い始めました。
【転職のきっかけ】「認知症でも社会の中で生きる」を叶えてあげたい
若年性認知症の方を受け入れるデイサービスを作る?!
さまざまな思いを抱え、介護関連の研修や講演などに参加しているうち、ある法人の経営者の方に出会いました。
介護現場で学んできたことや自分の取り組みなどを話しているうちに、若年性認知症支援コーディネーターの資格を取得したことを話したら「若年性認知症の方を受け入れるデイサービスを一緒に作らないか」と誘われたのです。
以前から構想があり、いっしょに働ける人を探していたというのです。
目の前が開けた、と思えました。
「社会の中で生きる希望」を叶えられる介護
若年性認知症の方の多くは、充実した仕事や家庭生活を送っていて、突然自分の病気に気づく人が多いのです。
中には、会社で出世し、家を建てたところで発症する人もいる。
家族を抱え、ローンを抱え、絶望的な気持ちになると思います。
そういう方の現状の居場所は、デイサービスくらいしかありません。
デイサービスに来ている方の多くは80代の方で、年齢も生活も違う方と過ごすことはおもしろくないし、寂しく、希望が持てないと思うのです。
それより、少しでもお金を稼いだり仕事をしていたりすれば、社会の中で生きているという希望が持てる――。
そんな希望を、社長と一緒に少しでも叶える手伝いができたら、本当の意味で、介護で社会貢献ができるのではないかと思ったのです。
「介護」という言葉自体に「やってあげる」というイメージがついて回ります。
でも、我々介護職がすべきことは、その人が普通に動いて楽しむ生活を、サポートすることだと思うのです。
危ないところだけ、ちょっと手を添えればいい。
「●●さん、立ち上がらないで!」などと叫んで制するのはそもそも違うと思うのです。
長く勤めた病院を辞めてでもやりたい仕事に出会えた
就労を目指す若年性認知症の方のサポートをするには準備が必要で、すぐに事業をスタートできるわけではありませんでした。
でも、ここでなら、「利用者さんがふつうに暮らすことを支援したい」という自分の思いも実現できるのでは、と思えたんです。
今の職場を辞めて、とにかくこの社長のもとで働きたい、とほどなく決心がつきました。
8年間勤務した医療法人では、病院の介護職からデイサービスの生活相談員と、発展してきましたが、辞めるときはそれほど躊躇がありませんでした。
【現在の仕事内容】訪問介護事業所のサービス提供責任者に
1年前に転職して入職した法人は、訪問介護事業所、小規模多機能型居宅介護、障害者向けのデイサービスなどを経営しています。
若年性認知症の方の就労型デイサービスの構想はありますが、立ち上げには長い準備期間が必要なので、今は訪問介護事業所に所属し、サービス提供責任者(サ責)として仕事をしています。
訪問介護は、自分がずっとやりたかった仕事ですし、現場にも出ながらヘルパーさんたちをまとめる今の仕事は、とても充実しています。
高齢者だけでなく、障害のある児童の介助もしますし、事業所の垣根を越えて小規模多機能型居宅介護のほうの仕事もするので、幅広い年齢の利用者さんのお宅に伺い、サポートをしています。
だいたい以下のようなタイムスケジュールで仕事をしています。
7:00 出勤。障害者向けのデイサービスのお迎えを担当。今日の担当を確認したらすぐに準備。
7:15~10:00 ヘルパーと一緒に介助しながらお迎えを行う。1人1人迎えに行くので、3名の送迎が終わると10時近くに。
10:00~ 勤務表を作るなどの事務作業。
12:00~13:00 昼休憩
13:00~ 小規模多機能型居宅介護の利用者さん宅に訪問し、入浴介助。
16:00~ 障害児の子どもの特別支援学校へのお迎え、家での入浴介助
18:30~ 事業所に戻って、サービス計画書の作成などの事務作業。
このほかに、介護支援専門員(ケアマネジャー)として、個別支援計画書なども作ります。
労働時間は長いです。しかし、仕事が多様で変化があり、毎日が刺激的です。
【理想の介護は?】「お手伝いさん」ではなく共に自立を目指す支援を
サ責の立場ではありますが、ヘルパー業務もどんどんこなしています。
現場が好きですし、現場を知らなければサ責としても成長できないと思っています。
また、サービス全体を見渡すケアマネジメントの視点も持ちながら、利用者さんの支援をしていきたいと考えています。
介護保険サービスが始まる前から長く勤務しているヘルパーさんの中には、どうしても「生活をお手伝いしている」「やってあげる」という視点になってしまう方がいます。
手順書を作ってもそのとおりに動かず、自分流になってしまう方には、根気よく説明して、自立支援の方向に持っていってもらうよう、自分も努力しています。
利用者さんがその方らしく暮らせることを実現するのが、自分たち介護職の仕事だと思っています。
ただ、この法人は看護師もリーダーも登録ヘルパーも、横一線に並んで連携できるとても雰囲気のいい職場です。
みんながお互いを信頼し、意見を言い合える。
この雰囲気を大事にしていきたいと思っています。
【処遇】訪問介護のサ責で年収約350万円にアップ!
以前、デイサービスで働いていたときは、月収が手取りで15万円程度でした。
契約社員から正社員になったものの、それほど給料はよくなりませんでした。
しかし、現在の月収は手取りで24万円程度。ボーナスも年3回、それぞれ20万円くらい出ます。
今は子どもがふたりいて、家のローンもありますから、ありがたいです。
これには、『介護職員処遇改善加算』の影響が大きいと思います。
介護福祉士資格を持って働いているからこその給料アップです。
やはり、介護職になるなら、国家資格を取得するのが良いと思います。
実務者研修は時間数が多くて、働きながら研修を受けるのは大変ですが、研修の内容も介護職を続ける限り必要なものですし、介護福祉士資格を取得するための絶対要件です。
将来のことを考え、仕事の面でも処遇の面でもステップアップするためにも、実務者研修を受け、勉強をして介護福祉士資格を取得して良かったと思います。
その後、介護支援専門員、認定介護支援専門員の資格を取ったことも、自分の自信になり、将来へのステップにもなると考えています。
<三輪 泉(ライター・社会福祉士)>
最終回の次回は、Tさんが介護職として大切にしている3つのことや、「転職して良かった」と語るTさんの転職経験の振り返り、今後の展望について語っていただきます。
次回「介護業界に転職して良かった!仲間と協力する楽しさを知って欲しい~転職体験Tさん4」は、8月26日に公開予定です。
*T・Mさんの「転職体験談」
第1回:
建設から介護業界へ異業種転職!本当に楽しい仕事って?〜転職体験Tさん1
第2回:
病院での仕事が辛くてデイサービスに異動。その人らしさを活かせる楽しい介護~転職体験Tさん2
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