介護業界で転職を考えている人にとって、採用側が求める人材がどういった傾向なのか、ぜひ知っておきたいこと。今回は、2013年後半から2014年上半期にかけて取材してきた、7か所の施設の記事内容の要点をまとめて掲載。今回は「採用したくないポイント」などを中心にご紹介していきます。
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「とりあえず」面接に来た人は難しい
『介護の仕事しか就職できないから』という理由で面接に訪れた人の採用は難しい、と語る、「社会福祉法人天祐会 請西苑」副理事長・本部長の森田恵さん
採用担当者の多くが「この人材はNG」と口を揃えるのが、「とりあえず」面接に来た人。それは表面的にいくら取り繕ったところで、採用のプロは見抜いてしまいます。そしてそういう人材は、結果的に利用者のためにならないことも、採用担当者たちは知っていました。
「私が採用したくないと感じるのは、『とりあえず話を聞きたくて来ました』と言う人です。面接する側に対して、様子見というのは失礼ですし、本気の気持ちが伝わらないですよね。たとえ志望理由の説明が上手くなくても、本気で来てくれる人の方がいい。『当社のサイトを見ましたか?どう感じましたか?』と尋ねた時に『ちょっと話を聞いてみないとわからないですね』という方もいるんですが、そういう方は採用できないと感じてしまいます」
「いきいきらいふ」執行役員 管理本部長 中尾公則(とものり)さん
「まず『賃金が安くても仕事をしなければいけないから』とか、『介護の仕事しか就職できないから』という理由は採用が難しいと思います。(中略)明らかに、どこの企業でも採用されなかったと思われる方もいますし、ご利用者サービスのことなどまったく気にせず、ただ、将来有望業界だからという理由で面接に来る方もいます。(そういう人の中には)何かあると明日からもう来ませんという、こちらを困らせてやろうという態度の人もいます。でもその人が来なくなって困るのは施設の利用者のみなさんです。そういう人がいるからこそ、良い人材は宝だと心から思うことができます」
「社会福祉法人天祐会 請西苑」副理事長・本部長 森田恵さん
自己主張しすぎ、協調性なしも敬遠される
また、いくら技術が高かったり経験が豊富でも、自己主張の強い人は、採用を見送るケースがあると言います。自己主張=やる気、ともとれますが、そこはやはり介護も組織で行う仕事、協調性やバランス感覚も求められるようです。
「いくら即戦力になると言っても“主張が強すぎる人”は採用しにくいな……と感じてしまいます。『私はこれまでこういうやり方でやってきました。なんでこの施設ではこうしないんですか?』というように、自分のやり方に固執してしまっているような方は、現場でスタッフ同士のトラブルを起こしやすいんですよ」
「株式会社白寿会・医療法人社団平平會グループ」木村博人さん
「主体性と協調性のバランスが不安定な方だと、どうしても採用しづらいなと感じてしまいますね。主体性を持つことは大事なことですが、基本的に周りの人を受け入れられる協調性がなければ、ただのわがままになってしまいます。また、職員同士の関係もそうですが、最も大事なのは『御利用者様を最優先に考えられること』。この姿勢が見られるかどうかは、採用を検討する上で大きなポイントになります」
医療法人社団苑田会グループ・株式会社明昭 筑田哲也さん
「この業界に必要な人材は、心・技・体のバランスの良い人が求められていると思います。よく言われる人間性は『心』、それに加えて高齢者介護・特に認知症ケアに関する知識・技能が『技』、タフマインドも含めた心身の健康が『体』という意味です」
「社会福祉法人天祐会 請西苑」副理事長・本部長 森田恵さん
マネジメントできる人材も求められている
さて、介護業界で働くというと、利用者と直接接する「現場」とイメージしがちですが、なかにはそうした現場を「マネジメント」できる人材、果ては「起業」を目指すぐらいの人材を求めている採用担当者もいました。
「実は現在、当社の部長クラスの人材はひとりを除いて全員が介護業界以外出身で、人材業界や飲食店経営など、みんな異業種を経験してきた人ばかりです。一方で現場の人材は、介護の経験を積んできた人と、新卒社員とで構成されています。店舗で働く人や、店舗を直接運営する直営事業部といった部門では、介護現場のことを分かる方が働きやすいのですが、人事や管理、フランチャイズ事業などのマネジメント業務を担当する場合は、むしろ業界の常識にとらわれない介護未経験者のほうが適している場合も多い。業務の種類によって、介護経験者がいいのか、そうでない場合がいいのかが明らかに変わってきますね」
「いきいきらいふ」執行役員 管理本部長 中尾公則さん
「介護の仕事を志す人は、目先の給料ではなく、介護業界や福祉業界で仕事をすることを、大きな視野で考えることが大切です。もちろんお年寄りのお世話をすることは大切で尊いことです。でも介護業界は一般的に給与が安く、それで将来が不安だという人は、自分で介護業界で起業すればいい。自分でできなければ社会福祉法人と組んで、自分の夢を叶えるぐらいの気持ちで、この業界に飛び込んできてほしいと思います」
「この業界で起業しよう、事業を立ち上げようという人間は、みんなガッツがあります。地味な世界ですが、とても奥が深いです。給料は一般企業より安いですが、管理職や役員になれるチャンスがある職場です」
「社会福祉法人天祐会 請西苑」副理事長・本部長 森田恵さん
介護に正解はない
「介護は誰にでもできる仕事ではない」とその価値を語る「医療法人社団苑田会グループ・株式会社明昭」筑田哲也さん
最後に、どの担当者も語っていたのが「介護に正解はない」ということ。利用者一人ひとりによって介護は千差万別、それが介護という仕事の難しさであるのと同時に、他の仕事にはない価値だと感じているようでした。
「この仕事って、どんなときでも“利用者さんが中心”でなければならないんです。だから、100人いれば100通りの介護の方法がある。人に合わせて柔軟な対応ができないような方は、いくら介護のベテランであっても、採用を見送ることもあります」
「株式会社白寿会・医療法人社団平平會グループ」木村博人さん
「私たちが相手にするのは“人”なんです。その対応に決まった正解はなく、1000人いれば1000通りの方法を見つけ出さなきゃいけない。介護って、やりたくないのにできる業務ではないし、やはり性格的な適正も必要だと思うんです。だから、誰にでもできる仕事ではないと思います」
医療法人社団苑田会グループ・株式会社明昭 筑田哲也さん
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