毎回、介護にまつわる問題点やちょっと困った介護スタッフの珍行動、介護現場での珍事件などを紹介するこのコーナー。
今週は、「訪問ヘルパーが見た!家庭料理の世界」という話題を紹介します。
訪問ヘルパーが見た「家庭料理」の数々
テレビの情報番組や雑誌などではグルメ情報があふれているが、多くの人が毎日食べる家庭料理は、メディアで紹介されるようなメニューとは別物。
世の中の人が普段どんなものを食べているかは、意外と知らないものだ。
高齢者のお宅で生活援助を行う訪問ヘルパーは、色々な人の日常の食事風景をのぞくことが出来る立場にあるが、一口に家庭料理といっても、本当に千差万別だという。
食の好みが違い過ぎる!
「訪問ヘルパーの仕事を始めるまで、人によって職の好みがこんなに違うものとは知りませんでした……」と語るのは、訪問ヘルパー歴10数年のコンドウさん。
「利用者さんの中には、味見しただけで喉が乾くぐらい濃い味付けが好きな人、コーヒーに信じられないぐらい大量の砂糖を入れる人、はたまた、何の味もしないぐらい薄味が好きな人など、本当に色々な好みの方がいます。
同僚の中には、白米を洗ったら『栄養が落ちる!』と怒られた人もいます」
えっ…そんな場所で食べるの…?
「食べる場所ひとつをとっても、夏でもこたつで食べる人、安楽椅子に座り、食器をサイドテーブルに置いて食べる人、食卓があるのにソファーで食べる人、さらに食卓の真横がトイレだったり、玄関を開けるとすぐ食卓だったり……。とにかく色々な食事の好みや作法があることを知りました」
食事の好みは十人十色なので、“正解”がないのが非常に難しいところ。「誰が食べても美味しいものを作る料理のプロは本当にスゴい」としみじみ思ってしまう。
コンドウさんが担当している利用者さんの中には、仕事としては楽でも『困りもの』な利用者さんもいるという。一体どんな人がいるのか……?
訪問ヘルパーが困った!偏食高齢者
「お年寄りの中には、とにかく同じものしか食べない人もいます。
私が担当していた80代の女性は、野菜や魚は絶対に食べない、肉も鶏のササミ以外はダメで、食事は毎回、『うどんorふりかけご飯』+『ゼリーor果物』でした。栄養士からも栄養不足を指摘されていましたが、『この年になって、嫌いな物を食べても……』と仰るばかりで、こちらはお手上げ状態です。
一方では、90歳を超えて300g近くのステーキをモリモリ食べたり、こってりラーメンをペロリと平らげたり、大盛りのご飯をお代わりするお年寄りもいます。元気だからいっぱい食べられるのか、食欲があるから元気なのかは分かりませんが、やっぱり食欲は大事です。メニューに興味を持ったり、美味しい時は『美味しい』という人は長生きだと思います」
グルメな世代がそろそろ高齢者に
家でも子どもには「何でも食べないと大きくなれないよ」と言っているというコンドウさん。ただ、最近気になることがあるという。
「現在、介護サービスを受ける世代は、まだ“ごはんとお味噌汁とおかず”というシンプルな食事を好む人たちが主ですが、もう一世代下の、バブル期を知る戦後生まれ世代が、そろそろ介護を受ける時期に差し掛かっています。その世代は舌が肥えていているので、食べ物の好みがうるさい可能性はあるでしょう。
さらにその下の世代になれば、もっと色々なメニューを知っていますし、食材や産地のこだわりなどもあるはず。将来的には、そういったリクエストに答えざるを得ないようになるかもしれません。
どこまでそういった希望に沿えるかは、私たち訪問ヘルパーにとっては楽しみでもあり、課題でもありますよね」
高齢者にとっても、食は最高の楽しみ!
訪問ヘルパーは料理の専門家ではないが、利用者の希望を少しでも取り入れ、幸せな生活を送れるようサポートするのが務め。
コロナ禍で飲食業界は大打撃を受けたが、料理の心得がある人を必要としている業界が他にもあることは、もう少し周知されても良さそうだ。
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