毎回、介護にまつわる問題点やちょっと困った介護スタッフの珍行動、介護現場での珍事件などを紹介するこのコーナー。
今週は、「老人ホームでの自然災害への備え」という話題を紹介します。
日本各地で起こる自然災害
新型コロナウイルス騒動が一向に収束しない中、恐れていたことが全国各地で起きてしまった。
九州地方や岐阜県などで豪雨被害が発生し、多くの住民が避難を余儀なくされる事態が発生。
住民や自治体は、ソーシャルディスタンスを確保しながらの避難が可能なのか、模索しながらの生活を強いられている。
今回の豪雨災害では、特別養護老人ホームの一部が水没し、多くの入所者が亡くなるという悲劇があったが、介護施設では自然災害への対応についてどのように考えているのだろうか?
都内の介護施設で働くスタッフに聞いてみた。
「東日本大震災をきっかけに災害対応が本格化」
都内の介護付き有料老人ホームで働く10年以上働くヤスダさんはこう語る。
「ウチの施設では、毎年、大掛かりな避難訓練を定期的に行っていましたが、
東日本大震災以降に“本気度”が上がりました。
それまでは年に2度、行っていた避難訓練は年4回に増え、『いざという時にどう動くか』『夜間に災害が発生した場合の対応』『館内および避難先までの導線の安全確保』など、実践的な訓練を行っています。
施設には自力歩行が困難な方もいますし、認知症の方もいます。そういった方が後回しになることが決して無いように、訓練は真剣そのものです」
悲惨な災害は起こらないのが理想だが、現実的には、地震、台風、豪雨、洪水、土砂崩れ、火災など、あらゆる災害を想定しておく必要があるだろう。
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昔は他人事だったけれど…
今では、避難訓練でもスタッフや入居者たちをテキパキとリードするヤスダさんだが、もともと避難などという行為には全く無関心だったという。
「私は東京の下町に生まれ育ちましたが、幸いなことに洪水や水害の被害には遭ったことがなく、“他人事”だと思っていました。
しかし、いま働いている施設は川沿いでもなく、海から10km以上離れているのに、ハザードマップは真っ赤っ赤。上流で大量の雨が降ると、深刻な浸水被害が予想されるゾーンにあります。
海抜が低くて、水が流れ込むようです。私はすぐ近所で生まれ育ちましたが、ハザードマップなんて単語は聞いたこともありませんでした」
介護の仕事を始めてから危機意識がアップ
「両親は、『○○台風の時も大丈夫だったから』などと言っていましたが、施設で働いて、避難の大変さを肌で理解してからは、両親やご近所さん、友人などに、
『あのあたりは大雨が降ったら何週間も水浸しになるんだからね』と、口酸っぱく言っており、非常食などもきちんと用意しています」
こういった情報は、自治体のパンフレットなどを読むよりも、知り合いに言われる方が効果があるようで、「うわ~、知らなかった。ちゃんと考えなきゃ」と言ってもらえることが多いのだそう。
ヤスダさんが働く介護施設では、上の階に避難する「垂直避難」をする可能性もあり、避難訓練も行っているという。エレベーターを使わずに階段を登る練習をするようになった利用者さんもいるそうで、健康確保にも一役買っている例もあるそうだ。