毎回、介護にまつわる問題点やちょっと困った介護スタッフの珍行動、介護現場での珍事件などを紹介するこのコーナー。
今週は、「介護施設にコロナショックは続く」という話題を紹介します。
新型コロナ対策でオンライン面会スタート
2020年もあっという間に半分が経過。
今年の上半期はとにかく新型コロナの話題で持ちきりだったが、緊急事態宣言が解け、騒動が少しずつ収まり始めても、コロナショックは続いている。
都内のある介護付き有料老人ホームで、入居者およびスタッフの悩みのタネになっているのは「オンライン面会」だ。施設で働くナカムラさんがいう。
「ウチの施設では、新型コロナウイルスの感染拡大防止のため、2月初旬から面会禁止の措置が取られました。そのため、大型連休の時期に面会を予定していたご家族から対策を求める要望が上がり、
オンライン面会ができるようにタブレットを購入。家族も入居者も、お互いに顔が見られたことで安心したようで、感謝の声を頂きました」
便利なオンライン面会、導入後の問題点は…
「オンライン面会の導入は好評でしたが、問題はその後です。
施設では6月半ばに面会禁止を解除しましたが、オンライン面会の便利さを知ったご家族や友人などが、面会をオンラインで済ませる例が増え、
“実際に会って話したい”と訴える入居者が相次いでいるのです」
入居者の家族の中には、施設まで遠路はるばるやって来るパターンも多く、一度知ってしまった“往復時間ゼロ”という魅力には抗えないよう。家族の言い分は、「その分、頻繁に話すようにしている」というものだが、やはり“リアル”で会いたいのがお年寄りの本音だ。
関連記事:
便利なオンライン面会で事件続出?!【介護施設とウィズコロナ時代】
年に一度の楽しみが中止に
一方、都内の別の老人ホームでは、入居者も家族もガックリする事件も起きている。父親が施設に入居しているフジイさんはいう。
「ウチの父が入居している施設は、大きな川沿いの小高い場所にあり、眼下に川面が見下ろせて、眺望は抜群です。父も家族も、その景色が気に入って入居を決めました。
この施設での最大の楽しみは、年1回開催される花火大会でした。花火大会当日は、入居者や家族が屋上に上がり、特等席で花火を楽しめるのです。
ところが今年は、新型コロナウイルス騒動で花火大会は早々に中止が発表されてしまい、父は
『来年の夏にもう一度花火が見られるかどうか……』と、気弱なことを言い出す始末。本当に残念です」
「施設内で交流がある」入居施設に預けた安心感
その落胆ぶりは想像に難くないが、フジイさんは「良いこともあった」という。
「父は施設に入るまで長らく一人暮らしをしていて、人との交流はほとんどゼロ。もし、自宅で暮らしていたまま新型コロナウイルス騒動になっていたら、間違いなく孤立化し、心身ともに良くない状況に陥ったに違いありません。
しかし、施設ではスタッフが1日何度も部屋にやって来ますし、
入居者同士で交友もあるようで、私も安心して生活できました」
このように、テレビや新聞などでは報じられない小さな事件が日々、施設では起きており、それに対処するのもスタッフの努め。
介護の資格、専門的な知識、経験が大切なのは言うまでもないが、こういった
日常の生活にどれだけ寄り添えるかということも、介護職の大切なスキルであるようだ。
関連記事:
「ルール違反」のヘルパーの行動で、孤独から救われた男性利用者のお話