毎回、介護にまつわる問題点やちょっと困った介護スタッフの珍行動、介護現場での珍事件などを紹介するこのコーナー。
今週は、「愛すべきおバカさん」という話題について紹介します。
マジメな新人介護職A君の“おバカエピソード”
今ではブームも一段落したが、一時期テレビ界を席巻したのが“おバカタレント”たち。クイズ番組で珍妙な回答を連発するタレントの姿に、視聴者はこぞって大笑いしたが、自分の周りにあのような人間がいると大変だ。
介護業界に飛び込んで来る若者の中には、学生時代に勉強が苦手だったタイプも少なくないが、今年、都内の介護付き有料老人ホームに介護職として就職したA君は、そこらのおバカタレントにも引けを取らない“愛すべきおバカさん”だという。
A君の上司にあたるオガワさんが、A君の“おバカエピソード”についてこう語る。
初めて知った俳句のルール。「簡単だ」と言って出来た俳句は…
「A君のおバカぶりが判明したのは、施設のレクリエーションで俳句を作る企画をやった時のことです。
A君は『季語』という日本語を知らず、『5・7・5』といってもポカーンとするばかり。『立春』『立冬』『冬至』『夏至』などの二十四節気は1つも知りませんでした」
オガワさんがあきれながらも俳句のルールを説明すると、「簡単ですね!」と言い放ったA君だが、出来上がった句は、下の句がすべて『楽しいな』か『うれしいな』だったという。
言葉を知らないA君の“おバカエピソード”が!
小学校低学年レベルの俳句を披露したA君。まだ働き始めて数か月にも関わらず、おバカぶりを示すエピソードがゴロゴロとあるとオガワさんは言う。
「つい先日、ある入居者さんの体調が悪くなり、病院に搬送される騒ぎがありました。
直前に見回りに行ったのがA君だったので、『SOSを出していないか、きちんとチェックしないと……』と言うと、『SOSって何ですか?』と言うんです。
私が意味を説明すると、『何の略なんだろう』『“助けて”の方が言いやすいのに』などとブツブツ言っていました」
アパートの部屋数は「全部で5部屋です」??
これ以外にもまだまだA君の逸話はあるそうだ。
「施設に入居している女性に、どんな家に住んでいるのかを聞かれた時のことです。
A君が『アパートです』と答えると、女性は『1DKなの? それとも1LDK?』と質問したらしいのですが、A君にはこれがチンプンカンプン。女性が『何部屋あるの?』と言い換えると、A君は指を折って『5部屋です!』と答えたため、女性は『広くていいわね~』とビックリしたそうです。
しかし、よくよく話を聞くと、A君はメインの部屋のほか、トイレ、お風呂、脱衣場、ほんの1メートルほどの廊下をそれぞれ1部屋にカウントしていたんです。
実際は6畳1間、風呂・トイレ付きのアパートだということが判明しました」
「“おじさん”に保証人を頼んでいいの?」
さらに周囲を驚かせたのは、A君が日本語のきわめて基本的な単語の意味を知らなかったことだ。
「ある日、A君があることで保証人を探していて、会社に相談を持ちかけてきました。
そこで、『まずはご両親に頼んで、それでもダメならおじさんやおばさんに……』と言うと、A君は『そんな人に頼んでいいんですか!』とビックリしていたんです。
どうやらA君は、『両親の男兄弟』を『おじさん(叔父さん・伯父さん)』と呼ぶことを知らず、『おじさん』といえば『中高年の男性全般』を指すのだと思っていたようです」
A君の名誉のために言えば、A君の両親には兄弟がいないため、叔父や叔母という単語を使う機会がこれまでの人生で一度もなかったのだそう。
ただ、A君の介護職としての働きぶりは基本的にマジメで、コミュニケーション能力も高いため、“愛すべきおバカキャラ”として、施設では人気者になっているそうだ。