毎回、介護にまつわる裏話やちょっと困った珍事件などを紹介するこのコーナー。今週は、「元アスリートは介護職向き」という話題について紹介します。
元運動選手は介護職にぴったり?
今年の夏はリオデジャネイロ五輪が開催され、街の話題はオリンピックでもちきりに。夏の甲子園もオリンピックの開催時期と重なり、テレビの前から離れられなかった人も多いはず。
(編集部注:本記事は2016年9月に最初に公開された記事です。)
「運動選手」と「介護」というと、一見何の関係も無さそうだが、関西地方で訪問ヘルパーとして働くTさんは、「元・アスリートはヘルパーにとても向いている」と語る。
Tさんは中学時代に陸上を初め、高校ではインターハイに出場し、大学は体育大学に進学したほど運動に青春を捧げた女性。しかしTさんが打ち込んだ種目は、「それで食べていくことは不可能」(Tさん談)なぐらいマイナーだった。そのうえ、Tさん自身も飛び抜けた実績を残せたわけではなかったため、大学を卒業すると同時に選手生命にも終止符が打たれた。
「体育大学出身と言っても、そのまま自分の専門分野で食べていけるのはごくごく一部です。多くの学生は体育教師の資格を取り、体育教師になることを目指しますが、募集は非常に少なく、先生になれるのもこれまたごくごく一部。大多数の子は“普通の会社”に就職します」
そういった“普通の会社”に入った子は、「体育大学出身というだけで、こき使われやすい(笑)」と語るTさん。彼女が介護の世界に飛び込んだのは30代になってからだったが、Tさんによれば「元運動選手は介護職にぴったり」だそうだ。
体育会系が介護に向いている理由は…
「元運動選手が介護職に向いている最大の理由は、
体力に自信があるということです。ヘルパーの中には60代や70代の方もいますが、介護の仕事はやはり体力が重要。その点で元・体育会系は、明らかに体力面では優位に立っていると思います。また動くのが好きだから、フットワークもいいんです。体を動かすことを嫌がらないというのは、大きなアドバンテージだと思います。
それから精神面でも、元・体育会系は介護に向いていると思います。例えば運動部では『先輩の言うことは絶対』ですし、敬語などもきちんと使えないとお話になりません。若い子の中には、まったく敬語が使えない子や、こちらが何か指示を出すと、『それやらなくちゃいけないんですか?』『やる意味あるんですか?』『習ったことと違うんですけど?』とか、すぐ言い返してくる子がいるんです。その点で元・体育会系は、
先輩に言われたことを、まず受け止め、口を動かす前に体を動かしますから、自然と上からも可愛がられます。
さらに、運動をやっていた子は、
サッパリとしている印象もありますね。ヘルパーをやっていると、利用者からキツいことを言われたりすることもあるんですけど、元・体育会系は良い意味であまり深く受け止めないというか。そういう“切り替えの速さ”みたいなものも、介護の世界で生きていくには大事なことのような気がします」
現在、スポーツ界では、「引退後の人生をどう歩むか?」という「選手のセカンドキャリア問題」が大きなテーマとなっており、プロスポーツや実業団で活躍したアスリートのキャリアプランとして、介護業界や福祉業界を勧める動きも始まっている。スポーツを引退して“燃え尽き症候群”になってしまった方は、介護業界を目指すという選択肢もありそうだ。
公開日:2016/9/5
最終更新日:2019/10/1